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2007.01.16
部会・研究会活動 <国際人権部会>
 
国際人権・人権部会 学習会報告
2006年09月15日
反人種主義・差別撤廃アジア・太平洋地域都市連合発足会議に参加して

報告:1.森雅博(堺市人権推進課人権企画)
2.藤本伸樹(アジア・太平洋人権情報センター)

〈第1報告〉

 2006年8月3日、4日に、バンコクで「インクルーシブな都市社会のための都市地域会議」という会議が開催された。これは、地域都市連合の発足会としての位置づけである。ユネスコは、ダーバン会議の結果を踏まえて、反人種主義・差別撤廃の方策を探ったが、この取り組みはその一環である。都市は、様々な人が集まり、共生する場である。そこで、都市に注目した。世界的には、欧州、アジア・太平洋、アフリカ、アラブ世界、北米、南米に分かれている。各地域にはリードシティがあるが、アジア・太平洋地域の場合はバンコクがつとめている。

 都市連合の組織は、とても緩やかな連合体である。ただ、反人種主義・差別撤廃という一つの目標としている点に意義がある。最終的には世界的な連合体に持っていきたいというのがユネスコの意向だ。

 各連合は、反人種主義のためのワークショップの開催や、研究・出版を行うこととなっている。リードシティは、ユネスコ本部や現地事務所と連絡調整を行うが、欧州では、地域総会、運営委員会が行われる運びとなっている。さらに、取り組みの支援のために資源センターが設けられている。

 参加都市は、10のコミットメントに合意することとなっている。まず「関心表明」を行い、その後コミットメント文書に署名すると言うことになっている。このコミットメントはすべて履行することは必要とされず、可能なものからという位置づけである。ここで挙げられる事業例はあくまで事例であり、独自の施策がある場合はそれでもよいとされている。

 ユネスコは当初20都市のエントリーを予定していたが、結局当日集まったのは14都市であった。その中で、署名にこぎ着けたのは5都市である。そのほか、NGOや国内人権機関、省庁代表も会議には出席し、コミットメント内容について議論を行った。

 会議の議論に合間には、各都市の状況について情報交換が行った。その趣旨は、よい事例に倣い、相乗効果をねらうというものである。ニュージーランドでのユダヤ人墓地焼き討ちの事例や、フィジーのインド出身労働者の子孫の課題などが示された。バンコクからは、ミャンマー移民に対する暴力の事例などが紹介された。堺市からは、行政と民間企業とが共同して人権擁護に向かう組織体としての人権教育推進協議会の取り組みを紹介した。

 今回合意されたコミットメントとは、あるべき状況を示したものではなく、そこにたどり着くための手法である。そこを上手く活用しつつ、都市の特性としてのプラスの部分と、マイナスの部分とを理解しながら、人権課題に立ち向かうことが必要であろう。また、アジア特有の人種主義の存在や、急速な発展に伴う未登録の外国人労働者の課題など、進行形の課題について交通整理しないと、強固な人種主義が残りかねない。現時点から、様々なネットワークを醸成しながら取り組みを進める必要があろう。

〈第2報告〉

 2001年のダーバン会議で、人種主義にどう立ち向かうかが議論されたが、そのフォローアップとしてユネスコが始めた取り組みの一つが、この地域都市連合である。ダーバン会議では、外国人排斥などの不寛容を含む広義の人種主義について、その分析や予防・救済、差別撤廃の施策を主に国がどう行うかがテーマであった。その結果策定された行動計画の多くの項目のうち、8項目がユネスコに宛てられたものである。中でも、反差別教育の促進が求められたが、そこを大きく捉えて、今回の取り組みにつながっている。

 2002年にバンコクで、2003年には大阪でこのフォローアップの会合が行われたが、この2003年の会議を契機として、具体的に都市連合を作ろうという動きが生まれた。元来欧州には地域的な人権保障機構があるが、これに加えて、2004年12月に欧州の地域都市連合が発足した。現在70都市が加盟している。

 今回のアジアの都市連合は、欧州のものとはコミットメント内容が異なっている。つまり、欧州のものをベースに、独自の内容を持っている。というのも、アジアでは、そもそも人種主義それ自体を否定する政府関係者が多いため、あえて「差別撤廃」を組織のタイトルに入れて、広い参加をねらったものである。人種主義だけにしてしまう、カースト差別について強硬な姿勢を見せているインドが、今回も反対するおそれがあったからである。欧州との顕著な違いを言えば、例えば第10項目の「人種主義者による煽動及び関連する暴力」。欧州ではヘイトクライムとして定着しているが、アジアでは定着していないため、このような文言とした。また、社会的排除の項目でも、欧州でのボトムアップではなく、政治的なリーダーシップを求めるという点がアジア的である。

 今後の課題としては、加盟都市を増やしていくという点である。また、リードシティであるバンコク市のリーダーシップが確立していない点も課題である。
 
 この都市連合のメリットは経験交流にある。加入も無料である点も利点だ。日本における人権条例の取り組みは、今回のコミットメント実施とあまり変わらないので、日本の地方自治体にとって敷居は低いといえる。そこで、推進委員会を固めて広報をすることが課題であろう。

(文責:李嘉永)