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2010.01.18
部会・研究会活動 <マスコミ部会>
 
マスコミ部会 学習会報告
2009年11月30日

メディア報道と人権
-求められるメディアの脱「55年体制」

平川宗信(中京大学教授、報道被害ネット東海)

 マスコミ部会は、民主党への政権交代をふまえて、メディア報道に求められる変化について人権の観点から検討するために、平川教授をお招きした。平川教授は、刑事訴訟法、少年法等の専門家であり、かつ、市民の立場で30年以上にわたって報道被害問題の研究と救済の実践に携わっている。当日は、大阪、名古屋の新聞社、放送局からおよそ20名が参加して熱心に討議を行った。以下、平川教授の問題提起について要約し報告する。

 「メディア報道と人権」といった場合、報道による人権侵害の側面を思い浮かべるが、本来、報道とは人権の擁護に資するべきものである。しかし、メディア自身がポピュリズム、センセーショナリズムに走り、国民の「知る権利」「市民自治」のための報道というメディアのジャーナリズムとしての機能が衰弱している。メディアのジャーナリズムとしての機能が弱まると市民のメディアに対する批判も強まり、それに乗じて報道に対する法規制が進行する危険性が高まる。

 最近の千葉事件報道をみても実際には死体遺棄容疑で任意同行を求められて逮捕されたのに、報道ではなんの疑いもなく「殺人犯」としての扱いをしている。

 2009年は、裁判員裁判の開始、政権交代による「55年体制」の終焉などまさに司法・立法・行政の大転換があった。民主党政権は、記者会見の公開、官僚記者会見の禁止、「日本版FCC」などメディア政策を転換させようとしている。メディアの「55年体制」とは、これまで「官」の情報は基本的に閉鎖されているという前提で官庁発表を報道し、さらにリークという形で取材・報道するというシステムだった。しかし、すでに情報公開が基本になっており政・官の変化に伴ってメディアの立ち位置も変える必要がある。今後は、より深い報道をするためには、その課題と取り組んでいるNPOなどが情報源として重要になるだろう。民主党のメディア政策に対して「抵抗」ではなく、メディアが「55年体制」から脱却して大改革をする好機であると捉えるべきであろう。

 報道被害救済・防止システムについては、人権と報道の自由のバランスについて「市民自治」「知る権利」のための取材・報道の自由という原則をふまえて、法規制ではなく自立的な救済・防止システムを確立していく必要がある。たとえば、BPOの強化や活字メディアの報道評議会の設立などがあげられるだろう。

 いずれにしても報道の危機は市民の「知る権利」の危機であり、市民自身の課題であるということをふまえる必要がある。

(文責西村寿子)