調査研究

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2005.04.05
部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2005年2月8日
A′ワーク創造館における
若年無業者のための自立支援事業について

(報告) 井村 良英(A´ワーク創造館)

  「日本型ニート」とは失業者を除いた「15-34歳の非労働力のうち、主に通学でも、主に家事でもない者」で、「社会活動に従事していないため、将来の社会的コストになる可能性があり、現在の就業支援策では十分活性化できていない存在」とされ、その数は全国で64万人(2003、小杉)といわれる。2002年現在、大阪市内の「ニート」の数を試算してみると、15-34歳の若年無業者は74万8600人中28万4200人、そこから家事・通学をしていない者を除いた「ニート」は5万5700人、そのうち学校を卒業して就職、家事、通学していない「学卒ニート」は中卒393人+高卒3607人+短大卒899人+大卒661人=5560人となる(中退者・進路不詳者、及び進路データのない専修学校・各種学校は除外。2003年度版の大阪市統計書から)。

  これに対し厚労省は、<1>若者自立塾創設(9.8億円、新規)、ヤングジョブスポットの見直し等による若年者への働きかけ強化(9.3億円)、就職基礎能力速成講座実施(2.3億円、新規)等、20億円あまりの事業を計画している。

  A′ワーク創造館では、家族→地域→社会への同心円状の広がりのなかで学校、就労、福祉に関わるどの組織・団体が、どんなサービスを提供しているか、「大阪におけるニート支援の輪」として図式化してみた。ひきこもりの若者を抱える5つの家庭が草むしり等の仕事を融通し合い、ひきこもり脱出をめざす「ファーストステップジョブグループ」から、保健所、適応指導教室、ユースハローワーク、職業カウンセリングセンター等の諸施設、さらに民間企業まで、支援の緩やかなつながりがうまく機能することが必要だと考えている。

  各支援サービスの詳細を、大阪における「若年無業者『はたらくこと』支援リスト」にまとめてみた。大阪府総合労働事務所の「職業カウンセリングセンター」は専門のカウンセラーによる個別相談やクロ-ズドのセミナー等の取り組みをしている西日本では大阪にしかない施設である。ほかに、若年者向けに仕事ふれあい広場、キャリアアップ相談室を実施する「独立行政法人雇用・能力開発機構大阪センター」、ハローワークを併設して求人検索のほか個別相談/就職スタートアップセミナー/就職スキルアップセミナー/ビジネスマナーセミナー/自分発見・適職発見テスト/ジョブクラブ/ビジネスインターンシップ等を行う「JOBカフェOSAKA」、JOBカフェに行きづらい人向けに参加型セミナー/キャリアカウンセリング/出張セミナー等を実施する「OSAKAのびのびキャリアネット」、職業相談・紹介/情報提供/セミナーを行う財団法人大阪市勤労福祉文化協会「しごと情報広場」、職業紹介・相談/職業カウンセリング/セミナーを行う「大阪ユースハローワーク」、また高等職業技術専門校等、いずれも無料でサービスを提供している。さらに公的な制度として、各種教育・訓練機関での委託訓練、事業主団体・事業主委託訓練、教育訓練給付制度、技能検定制度等がある。

  A′ワーク創造館では、職業相談、各種スキルアップ講座、委託訓練以外に、<1>年齢不問で、人間関係が苦手だとか学校に行っていないから自信がない人対象の「これから学級」と<2>若年無業者対象の「仕事探しはじめ」を実施している。<1>は週1回2時間×全14回を年2回実施、<2>は全8回で年1回実施、参加者(<1>の2003年度実績+<2>の2004年度実績)は55人(うち若年者51人。男33人/女22人)、全く職歴がなく、社会参加していない人が多く、なかには、ひきこもり脱出組や若年ホームレスの参加もある。<1>の参加者は約7割が求職中で、受講後約5割がアルバイト等を始め、2割程度は就労を継続している。<2>では、求職経験がなくハロ-ワークに行ったことがない参加者が多いが、A′ワーク職員など、7人のスタッフがハロ-ワークや個々人に合った就労支援機関に同行したり個別相談会を実施している。仕事の探し方を知らない10代後半に効果を上げ、3人が就職、他の参加者は求職活動を始め、少なくとも無業者から「失業者」になった。働こうと思えば可能だが悩んでいるモラトリアム型の20代後半には効果が薄く、年齢が高くなるにつれて支援は難しくなる。

  働く意欲があるからこそ受講する(半数は保健所等の諸機関・団体からの誘導・紹介、半数は自ら)が、ひとりで通えない人にとっては厳しい。人とあまり接した経験のない若者が自分なりの就職活動を始めるのが本事業の成果だが、正社員として就労するにはハードルが高いし、社会参加・就労体験を通じて自信を取り戻しながら稼ぐ喜びも体験できる場が必要である。また、より適切な場を相互に紹介し合う支援のネットワークづくりも重要である。

(熊谷 愛)