調査研究

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2004.09.13
部会・研究会活動 <歴史部会>
 
歴史部会・学習会報告
2004年8月1-2日
『非人番』の警刑吏役について
-伊勢地方を中心に

和田 勉(松阪市部落史編纂室編集長)

  2004年8月1日から2日にかけて和歌山県において第9回全国部落史研究交流会が開かれた。

  分科会úJ(前近代史)は、「近世被差別民と警刑吏役-その地域的特質」をテーマとして、中尾健次さん(大阪教育大学)の司会のもとで、3つの報告が行われた。


  本報告は、伊勢地方の事例を中心に、非人番の制度や役割・生活を紹介したものである。伊勢国は、大きく分けると譜代が領有する北部、天領・外様領がある中部、紀州領・神宮領がある南部から構成されているため、その支配領域ごとに非人番制度の相違があることを史料をもとに紹介した。非人番とは、町方や村方に非人が入り込まないように見張る番と認識される場合もある。しかし伊勢地方の場合、江戸初頭においては、非人番は百姓身分が行っていたと考えられるのだが、後に非人身分が行うようになっており、非人番とは非人身分の番人と規定される。

  また四日市町の非人数の検討から、当初町方に集中していた非人が、年々減少しているおり、時代が下るにつれて町方の非人が各村方に移住し、村抱えの非人番になっていったと指摘した。なお村抱えの非人番に対しては、茶がま、鍋、桶、茶碗、火箸など細々として生活用品が、村からを給付されたという史料も残っている。このことは、非人番を抱えることが,村方にとって多大な経済的負担となりうる要素が備わっていると解釈できる。このことが「惣廻り非人番」の設置という、伊勢地方の特徴的な制度を生み出す契機となるのではないか。「惣廻り非人番」とは、村方10-15ヵ村を大庄屋組に組織し、その大庄屋組に1人ずつ置かれた非人番で、その職務は、村方の非人番を交代で村々を巡回させるというものである。

  時間的な制約から、非人番の役務や生活について史料に基づいて具体的に紹介されることはなかったが、犯罪人・胡乱者の取締りなど、一般的な者に加えて、牢番が非人身分の役務となっているのが特徴的である。最後に、津藩や紀州藩田丸領においては、非人番と同種の仕事をするものに「ささら」身分がいたことも指摘された。

(藤原 豊)