調査研究

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2004.10.14
部会・研究会活動 <歴史部会>
 
歴史部会・学習会報告
2004年8月1-2日
兵庫県清和会と満州移民

前川修(ひょうご部落解放・人権研究所事務局長)

  2004年8月1日から2日にかけて和歌山県において第9回全国部落史研究交流会が開かれた。

  分科会II(近現代史)は、昨年にひきつづいて共通テーマ「融和運動と水平運動-その対抗と並行」に沿って、竹森健二郎さん(福岡県人権研究所)の司会で、次の二つの報告があり討議をもった。このテーマは各府県の融和運動を対象として、その役割を探るとともに、水平運動との関係をみようとするものである。

  第二報告は、兵庫県清和会が部落民の満州移民を積極的にすすめていったことに関する報告である。

  周知のように、満州移民は、1932年の「満州国」の成立と、この年にはじまる農村漁村経済更生運動がその動因であった。中央融和事業協会は、部落経済更生運動の一環として、部落民の満州移民を奨励した。部落の零細土地保有と過剰人口の解消がその狙いであるといわれた。

  兵庫県清和会は、幹部が中心となって1938年から数次にわたって満州視察団を送り出す一方、中央融和事業協議会などが主催する全国規模の講習会や指導者練成会に積極的に参加した。さらに、県内での講習会・移民促進協議会・懇談会・映画会を主催したり、それらへの部落民の参加を要請した。

  その結果、1938年から部落からも満州移民を送出するに至った。それは、単独移民、満蒙開拓青少年義勇軍、応援作業班としてであった。しかし、送出した部落は数10か村、人数も総計で2-300名程度であったと思われる。

  なお、清和会幹部が、満州開拓地では差別観念が存在する理由がなく、差別観念を消滅させる力が強く働いている、と主張、宣伝して満州移民を推進していたことが注目される。(里上龍平)