つぎに山本尚友さんより「真宗と被差別民」という題目で、研究史の整理に主眼をおいた報告が行われた。
被差別民の9割を檀徒に持つとされ、被差別民と最も身近な仏教教団である本願寺教団だが、「真宗と被差別民」に関する研究は、部落史におけるその他の分野に比べると比較的新しい研究である。70年以前にはほとんど研究がなく、その出発点を、1975年に船越昌さんが「被差別部落形成史の研究」において一向一揆との関係を示唆したことと、ほぼ同時期の「兵庫県同和教育関係史料集」の編纂作業、そしてその過程において「本願寺穢寺帳」の存在が明るみになったことにもとめており、そしてその後の研究史を<1>部落寺院制について<2>本願寺教団における差別的制度に関する諸研究、に大別している。
<1>は安達五男さんは提唱した「部落寺院制」、すなわち「穢寺」と呼ばれる部落寺院が特定の中本山の末寺となっているのが幕藩権力による強制か否かの議論である。否定的な説がやや強いような感はするが、決着はついていない。
<2>の代表的な研究として、左右田昌幸さんのものがある。本願寺や在地にとって部落寺院とは何なのか、という命題を「白地黒地」論争を通して検討している。部落寺院に対する意識は、地方によって異なり、幕藩権力にとって見ても、地元の実情を調査して判断を下す場合が多いようである。
そして、各地方における研究をどのように分析するかは今後の課題であるとして報告は終了した。
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