調査研究

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2005.02.15
部会・研究会活動 <地域教育システムの構築に関する調査研究事業>
報告書 教育コミュニティづくりの理論と実践
-学校発・人権のまちづくり-

発刊にあたって


 現在、学校をはじめとした教育制度の制度疲労が指摘され、教育改革が重要な課題になっている。そして、その大きな柱である「地域に開かれた学校づくり」が提起されて既に久しく、全国的にもさまざまな取り組みが模索されている。

 大阪府においては、1995年より、家庭・地域そして学校が協働して学力保障の充実を目的とした「ふれ愛教育推進事業」が始まった。2000年度からは、それをさらに発展させた取り組みとして、府内のすべての中学校区での「地域教育協議会(すこやかネット)」づくりが「総合的教育力活性化事業」として推進されている。全国的にみても、壮大な教育改革の試みとして大きな注目を受けているといえる。

 こうした中で、私たちは2000年度より教育コミュニティ研究会を立ち上げ、この大阪の取り組みが「学校とコミュニティの再生」にいかなる役割を果たしているのか、その普遍的意義は何なのか、そしてそのための具体的実践とその到達点・教訓は何なのか、を明らかにしようと調査研究に取り組んできた。

 また、「地域に学ぶ」ことを重要な柱としてきた同和教育が、「ふれ愛教育推進事業」の一つの大きな推進力であったことからも、「地域に開かれた学校づくり」と人権の関連性は大きな関心事であったことはいうまでもない。

 2001年8月には、大阪府内でも市ぐるみで先進的な取り組みを進めている松原市の4つの中学校区の事例研究を中心に『協働の教育による学校・地域の再生――大阪府松原市の4つの中学校区から――』を報告書として発刊することができた。

 本報告書はそれに続くもので、府内の松原市、大東市、富田林市、貝塚市、和泉市、高石市、大阪狭山市、田尻町、岬町、高槻市、茨木市、吹田市、豊中市、など13市町におよぶ小中学校区の取り組みをインタビュー調査する一方、教育コミュニティづくりの理論化を検討しまとめたものである。

 本書の構成は、第1部で、大阪府内の教育コミュニティづくりの到達点、そこに至るまでのさまざまな経過や教訓、そして今日の課題、をそれぞれの角度からまとめている。

 第2部は、国内外の教育コミュニティづくりの実践を、社会的不利益層のエンパワメントという視点から分析しようと試みたものである。

 第3部は、教育コミュニティづくりの思想を欧米でも注目されつつある「市民性教育」と重ねる一方、国内外で台頭している「功利的個人主義の教育観」をきびしく批判している。

 本書が、大阪をはじめ全国で「地域に開かれた学校づくり」に取り組む教員、地域住民、行政関係者、研究者などの方々に少しでも意味のあるものとなれば幸いである。また、本書に対する率直なご意見、ご批評をお願いするものである。

 最後になったが、ご多忙ななかを私たちのインタビューに快く応じていただいた多くの方々に、この場をお借りして改めて深くお礼申し上げる次第である。



2003年1月