調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動インターネット上の差別を考える研究会> 学習会報告
インターネット上の差別を考える研究会
 
インターネット上の差別を考える研究会
2002年7月4日
岡山市電子掲示板に係る有害情報の記録行為禁止に関する条例

(報告) 小川 雅史 (岡山市人権推進室人権同和啓発課課長補佐)

「岡山市電子掲示板に係る有害情報の記録行為禁止に関する条例」について、岡山市人権推進室人権同和啓発課課長補佐小川雅史さんからご報告をいただいた。以下、その概略を紹介する。

1 条例制定の経過

 近年のIT技術の発展に伴い、インターネット等の高度情報通信ネットワークが発達している。情報化社会の進展は多くの利便性と豊かさをもたらす一方で、人権を著しく侵害する情報も発信されるようになった。

2000(平成12)年6月、インターネット上の掲示板に岡山の被差別部落の「地名」と「そこに多い姓」が書き込まれているのを発見した。岡山市では、掲示板管理者に対し抗議と削除の要請をし、まもなく削除されたが、削除されるまでの数日間、あらゆる場所のあらゆる人が読める状態であった。その後、岡山地方法務局、岡山県など関係機関を情報交換や対策について協議を行っている中、再度、同じ掲示板上に差別を助長する書き込みや岡山の部落の地名が特定できる書き込みがされているのを発見した。現行法での対応が難しい中、こうした状況が繰り返し発生していることから、自治体としてとりうる方策として何があるかについて岡山市総合政策審議会総務社会部会を中心に審議を重ね、条例素案を作成し昨年末にパブリックコメントの募集、2月議会の審議を経て、標記条例を3月22日に交付、5月1日施行となった。

2 条例制定の趣旨

近年のインターネットの普及に伴う情報の流通拡大により、個人のプライバシーを侵害する情報、他者を誹謗中傷する情報、差別を助長・誘発するおそれが高い情報、青少年の健全育成を阻害するおそれのある情報等の有害な情報がインターネット上で日常的に流通している現状に鑑み、岡山市が開設する電子掲示板において、この様な有害な情報を責任もって排除し、インターネット等の高度情報通信ネットワークの健全な利用を広く啓発することで市民の人権意識の普及高揚を図るものである。

3 条例の主な特徴

第1条(目的)において、条例制定の目的を単に市の電子掲示板の管理運営上の規定を明確にするだけでなく、市民の人権意識の高揚に寄与することとしている。

 市長が有害情報と認めた場合は第4条(措置)の規定に基づき当該有害情報を削除するが、「情報の統制」や「恣意的な削除」という誤解を受けないために、同条において削除の理由等を明示するものとしている。また、第5条(公表)において、削除の状況を年1回以上公表するおり、より公平で適正な判断を行うために、第7条(審査会)において、人権問題に識見を有する学識経験者(3名)で組織する有害情報審査会を設置する。

 また、条例をより実効性の高いものとするため、第8条(報告の聴取)において、有害情報の記録行為者やそれに関与したと認められる者に対して、質問又は報告を求めることができることとしている。第9条(過料)において、過料規定も設けているが、これは行為者に過料を課すことを目的としたものではなく、有害情報の記録行為を抑止する効果や記録行為者に対する啓発効果等を狙いとしたものである。

4 おわりに

岡山市が管理する電子掲示板の有害情報の管理に関しては、条例での規制よりもその都度個別に対応する方が管理者としては運用しやすいが、条例を定めることにより市民の人権意識の高揚を図ることと、市の有害情報に対する姿勢を明確にするとともに、岡山市のこうした取り組みが他の自治体に波及することを望んでいる。

より詳しい情報は岡山市ホームページへ

(文責・事務局)