調査研究

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<部落解放・人権啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
1998年3月11日
同和教育を柱とする人権教育啓発法に関する法整備にあたって期待するもの

野口 克海(堺市教育長)

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1. 今日の教育改革の理念

1985年中曾根内閣の時に出された「臨教審」答申の3つの柱

  • 個性尊重 
  • 生涯学習社会の実現
  • 時代の変化への対応      

 これが今日進められている教育改革の根底にある。

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2. 改革の主なポイント

 校種別に見て、いちばん進んでいるのは大学である。社会人の大学入学、一芸、カリキュラム、入試の問題・方法もどんどん変わっている。

 高校では、総合学科の導入を始め学科、コ−ス、入試の制度・問題の多様化があげられる。

 変わらないのは小・中学校。教育の地方分権、民間からの校長への登用等、国からの提案はあっても現場が変わっていない。    


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3. 問題点 

トップダウンからボトムアップへ 心配なのは、教育改革が全てトップダウンで進められている点である。総合的な学習の時間を、2002年から各校独自のカリキュラムに沿ってすることになっているが、できるとは思えない。受け止めるだけの力が弱い。

 学校はもっと門戸を開き、教室の中、学校と地域、学校と教育委員会都道府県と国の関係etc.、全てをボトムアップし、実力と中身の伴った教育改革の実現が必要と思う。

公にして民の教育を

 小学校高学年での学級崩壊、中学生のナイフ殺傷事件等、マスコミからのニュ−スの影響で、公立校不信が大きく拡がっている。しかし、公立校には驚くほど競争がない。無競争は無責任にも通じる。そして、ノーサービスに前例主義となる。

 公立が私学に負けない為には、民の力=地域の教育力を取り入れなければならない。地域と一緒に学校運営をし、地域性をもっと発揮してほしい。公立校には多様な子どもがいる。その面白さを生かし、「学校を公園のようにしてしまおう」という大胆な発想がほしい。

教育界の不良債券の回収を

 教育界に不良債券を発行した責任者は、文部省、教育委員会といった行政、そして、組合もである。発行元には責任をもって回収してほしい。

 世間の常識では考えられないようなことが学校現場にある。週5日制も先生の為ではないのかといった見方が根強くあるのは事実だ。   

 自己反省し、互いに厳しくやらないと、市民、地域、保護者に信頼される学校作りはできないし、教育改革も成功しない。

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選択・競争・評価と義務教育

 これからは選択の時代である。学校に対して評価をきちっとしようという動きがある。

 「個に応じた教育」を実現する為には、学校(教師)の側の思い切った発想の転換が求められる。

 「通学区域の弾力化」を文部省は強く指導している。実質、小・中学校の通学区域がフリーになっている東京の姿は近々の大阪の姿でもある。選択の問題に安易に乗ることは、弱者切り捨てになる可能性も高いと危惧している。


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2002年をどう迎えるか

 週5日制完全実施が当初の計画より1年早められ、2002年からとなった。単に休みが2日増えるということに止まらず、学校教育の「質」が大きく変わる大変なことである。

 各教科の持ち時間が現行の7割ほどになってしまう。カリキュラムが変わり、時間割の組み方が学校によって多様になり、教科書が薄くなる。

 学校はスリムになるが、それを受け止める力が地域・家庭にあるのか不安である。地域でどう学校、家庭を支え、地域のコミュニケ−ションの力をどうつけるか考えるべきだ。

(平松 隆)