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人権条例等の収集と比較研究および提言プロジェクト・学習会報告
2002年9月26日
市町村合併の動向と条例等の取り扱いについて

大阪府総務部市町村課

堺市の人権行政に関する調査報告

中川 幾郎 (帝塚山大学)

 (第1報告) 「市町村合併の動向と条例等の取り扱いについて」

大阪府市町村課から、市町村合併の動向と条例等の取り扱いについて、次のような説明があった。

いわゆる「明治の大合併」「昭和の大合併」は、行政目的達成の必要性などから実施されたのに対し、「平成の大合併」は、市町村が自主的に進めるものであり、地方分権のさらなる推進のために実施されるものである。

市町村合併をめぐる状況については、背景として、市町村を取り巻く環境の大きな変化がある。住民の生活範囲の拡大に伴い広域的な行政課題への対応やまちづくりへのニーズが高まるとともに、「地方分権一括法」の施行で体制強化等が求められる一方、厳しい財政状況の中、課題への対応が単独では困難であったり、広域的な対応の必要性が生じている。

国では、合併の推進に向けて合併特例法の改正し、「市町村合併支援本部」の設置、「市町村合併支援プラン」の策定・拡充を行っている。合併の状況は、2000年までが13件、2001年1月以降は7件であり、法定合併協議会の設置が103、全市町村の約8割に当たる2495市町村が618の検討組織を設置している。

大阪府では、2000年12月に「大阪府市町村合併推進要綱」を策定、機運醸成のため、シンポジュウムの開催やシュミレーションソフトの作成等に取り組んでいる。さらに補助金による支援の実施や合併支援本部の設置、また今年4月には合併支援地域として、富田林市、太子町、河南町、千早赤阪村の地域を指定し、7月には、府事業の重点的な実施、事業への支援等を定めた「大阪府市町村合併支援プラン」を策定した。

合併に係る協議については、合併の申請等の手続きと具体的な合併協定項目が示され、条例・規則については、新設合併では、合併関係市町村の条例・規則はすべて失効し新たに制定され、編入合併では、編入する市町村の条例・規則を、必要な改正を行い適用することとなる、等の説明がなされた。

これをうけて、合併協議会での決定事項の法的拘束力の有無や合併による条例・規則の取り扱いによる人権行政をはじめとする各種施策の後退のおそれ等について質疑がなされた。


(第2報告) 「堺市の人権行政に関する調査報告」

次に、帝塚山大学の中川幾郎さんから「堺市の人権行政に関する訪問調査」について次のとおり報告があった。

堺市では、人権条例は制定していない。計画として、「人権教育のための国連10年堺市行動計画」「同後期計画」を、方針として、「堺市同和教育基本方針」及び「堺市同和行政基本方針」が策定されており、これらに基づいて、人権行政が推進されている。

推進体制は、「総務人権局」に理事を置き、そのもとに人権部、男女共同参画推進担当部長、同和行政担当部長及び人権ふれあいセンターが置かれており、施策を総合的に推進するため、人権啓発推進本部及び人権教育のための国連10年推進本部を設置している。

市民組織は、各種団体、企業、宗教法人等の推進委員及び校区推進委員の約2600人からなる堺市人権教育推進協議会と堺市人権教育のための国連10年推進市民懇話会があり、行政と連携して取り組みを進めている。

課題としては、‡@市民組織が大きくなりすぎ、活動が義務的に終わっているのではないか等、実態的活力の有無が懸念される。行政も、アウトカムの測定をしておらず、事業等を量的にこなすことに追い立てられているように見受けられる、‡A市役所発行の地図に同和地区の記載があった。すぐれたコミュニティーであることの明示であるともいえるか、‡B評価システムが不在である、‡C都市型自治体特有の形式化の恐れがある。組織が大きすぎ、縦割りになっている、等の報告があった。

そして、‡@市民協議会は校区単位住民自治協議会に発達させ、人権・教育・まちづくり等を一体的に考えていくべき、‡A小さな本庁・大きな支所をめざすべき、‡B人権条例が制定されるほうが、より施策の総合化やまちづくりにつながる、等の議論があった。