調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究プロジェクト・報告書一覧結婚差別問題研究会> 学習会報告
<人権教育・啓発プログラム開発事業>
 
結婚差別問題研究会
2002年10月26日
部落出身者と部落外出身者との通婚の状況について

(報告) 内田 龍史
(大阪市立大学大学院)

  結婚差別に関する研究会では、これまで半年あまりをかけて、2000年度の大阪府調査における「被差別体験調査」の事例などを手がかりに、どのような視点で調査・研究を行うべきか検討を行ってきた。今回は、今後インタビュー調査を行う上で分析の指標とすべく、これまでの結婚差別と、部落出身者と部落外出身者との結婚を意味する通婚の状況について筆者が報告を行った。

そもそも「結婚差別」はなぜ起こるのだろうか。『部落問題事典』によると、戦後の民法改正によって家意識はなくなったにもかかわらず、世代を越えての<家>の連続を意図する<家意識>が、新しい身分ともいうべき<家柄><家格>などの意識と結合しながら残存しており、身分制のもとでの内婚制の結果として、通婚する家は同一の身分であるといった<つり合い意識>が形成された。このことは、部落の者と通婚すれば自分の家(親戚)も差別を受ける、という考え方が持たれ続けていることを意味しており、それらは世間の意向に同調して行動する傾向がある日本社会の行動様式によっていっそう強化されている、と述べられている。

 報告者は、部落出身者と通婚すれば自分の家格が下がると同時に家(親戚)も差別を受ける可能性を否めないという現状認識に加えて、必ずしも「家」を媒介とせずとも、部落出身者と通婚することによって自らが差別されるリスク可能性を否めない(引きうけられない)現状にことにこそ核心部分があると問題提起を行った。さらに、差別されるリスクのみならず、部落出身者との結婚は親や親族から祝福されない傾向にあるなど、「幸せな結婚」イメ−ジとは乖離してしまう可能性があり、それは必ずしも部落出身者に対してだけでなく、結婚制度そのものが孕んでいる様々なマイノリ

ティに対する排除の問題を考慮しなければならないことを提言した。

 部落出身者に対する結婚差別の状況については、大阪府で行われた実際に通婚しているカップルに対する調査報告から、約2〜3割が結婚差別を受けており、その数値はここ20年間減少がみられないことを確認した。また、通婚に関しては、年齢が若くなればなるほど一貫して増加していることは明らかであるが、その理由は必ずしも差別意識の減少のみに還元できるものではなく、増加の激しい時期は農村部から都市への人口の流入などの都市化の進展および高度経済成長期と対応しており、マクロな社会変動が生みだした結果である可能性を見いだした。というのは、通婚率の増加は、「恋愛結婚」の増加とかなり近似しているからである。家柄の釣り合いを重視する

「見合い結婚」は、そもそも部落外出身者が部落出身者を排除する意味を持っており、人に移動に伴う出会いのチャンスと「恋愛結婚」の増加に伴って、通婚が増加したと考えられる。しかし、それでもなお、人口比を考えると、若者世代の部落出身者どうしの結婚する割合はかなり高く、いまだ何らかの婚姻バリアが存在していると解釈できる。

 また、これらの社会的事実は、部落出身者の社会観・アイデンティティにかなり影響を与えていると想定できる。それらは、今年度中に行われる予定である、インタビュー調査の事例をもとに明らかにしていく。