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2007.10.26
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人権のまちづくりの事例収集と比較検討プロジェクト学習会報告
2007年8月29日

部落差別撤廃・人権条例の活用について

部落解放・人権研究所
大阪府
三重県
大阪府堺市
長野県東御市

〈第1報告〉

 昨年に各自治体にアンケートを行ったが、その後、本年7月14日現在では、若干条例制定自治体が増加している。合併前の2004年時点では764自治体であったが、今日は都道府県を含めて417自治体が条例を制定している。合併による減少を勘案すれば、実数としては減少しているものの、割合としてはさほど減少しておらず、合併により引き継がれなかった自治体は3事例に止まっている。新たな動きとしては、人権救済に関する条例の制定に関わって、鳥取県では見直しの検討が進められている。公権力人権侵害については厳しい制裁で臨み、民間の場合は説得型の仕組みとするという方向性のようである。また、千葉県では、障害者差別の救済を軸にした条例が策定されている。

 ただし、条例を制定したとしても、宣言条例に止まっている市町村があり、具体的に施策に反映されていないという課題がある。審議会設置は296自治体、答申があるのは98自治体、実施計画は160に上るが、複数計画を策定する自治体がある点は留意しなければならない。

 条例は、住民と自治体との取極めとして極めて重要な意義を有している。今後の課題としては、未制定の自治体に制定を働きかけるとともに、宣言条例を審議会設置条例に改正したり、計画策定を働きかけるなど、条例の活用を求めていく必要がある。また、条例それ自体が知られていないという課題を克服するために、積極的な啓発が必要である。

 さらに、条例の活用を推進するために、自治体間の連携や、経験交流を図る必要があるであろう。そのために、人権条例制定自治体のネットワークを作ることが重要である。さらに、差別撤廃に関する国際的な自治体ネットワークへの参画を求めていく必要がある。

〈第2報告〉

 1990年に「人権県宣言」に関する決議が採択され、その後前市町村で人権尊重宣言が採択された。その宣言を受けて、1995年に有識者による人権政策推進懇話会を設置し、1996年、知事に対して条例制定を含む人権政策の推進について提言が行われた。その翌年の97年10月に、人権が尊重される三重をつくる条例が制定された。この条例は、人権施策に関する県の積極的な姿勢を示し、市町村、県民の責務などを定めている。

 実施状況としては、人権問題に関する三重県民意識調査を3回、職員意識調査を2回実施している。庁内体制としては各部副部長等を委員として人権・同和行政推進会議を組織し、人権施策推進にかかる基本方針等の策定等を行っている。かかる事項の調整・推進のために、各部人権特命監を委員とする人権特命監等会議を組織している。審議会については条例第6条に基づいて、「三重県人権施策審議会」を設置している。その答申をもとに1999年に人権施策基本方針が策定されたが、2006年には、子ども・高齢者虐待や女性に対する暴力など、対応の強化が求められる課題やインターネット上の人権侵害など、新たに対応すべき課題を明示すべく、改定された。

 実施計画に関しては、これまで参事に渡って推進計画を策定してきたが、昨年の基本方針改定に伴って「人権が尊重される三重をつくる行動プラン」を策定し、07年度施策に反映している。

 これらの施策については、年間を通じた計画、実施、検証、改善の順序で事業の推進を図ることとし、行動プランに基づく取り組み状況などをまとめ、審議会に報告している。

 条例の認知を高めるために一万人アンケートを行っているが、近年は認知度が伸び悩んでいる。そこで、あらゆる機会を捉えて周知することが課題となっている。

〈第3報告〉

 大阪府における条例制定の経緯としては、1993年に同和問題解決のための研究会を立ち上げ、人権・同和問題についていかに庁内体制を充実・強化するかを検討した。さらに、1994年には、「人権意識の高揚を図るための法的措置等研究会」を設置し、条例の制定に関して検討した。1997年の大阪府人権尊重の社会づくり懇話会による提言を受けて条例大綱案を作成し、1998年「大阪府人権尊重の社会づくり条例」が施行された。

 条例は、1条においてその目的を述べたあと、府の責務を規定し、3条以降では基本方針の策定など、府として人権政策をどう進めるかというアウトラインを示している。

 この条例に基づいて、「大阪府人権施策推進基本方針」を2001年に、「大阪府人権教育推進計画」を2005年に策定している。これらの方針・計画に基づき、人権相談や人権啓発事業を進めている。この方針・計画の策定に当たっては、「人権施策推進審議会」から、当事者団体からのヒアリングを踏まえた「大阪府人権尊重の社会作り条例に基づく基本方針について」と題した答申を得ている。なお、施策の実施に関しては、毎年「人権施策の状況」を取りまとめて、点検を行っている。

〈第4報告〉

 堺市は、条例制定以前にもすでに「人権擁護俊宣言」('80年)「非核平和都市宣言」('83年)、「人権施策推進基本指針」「人権施策推進計画」('01年)を策定してきた。2006年に政令指定都市に移行したことを踏まえて、「平和・人権」を大きな柱としたまちづくりを推進することを目指すために、行政や市民の責務・役割を明らかにした「堺市平和と人権を尊重するまちづくり条例」を制定した。

 本条例の特徴としては、「グローバルな視点」である。同和問題をはじめとする人権課題が堺市においても存在するとともに、高度情報化やグローバル化によって新たな人権問題も発生している。これらに対応するためには、総合的に人権施策に取り組むのと同時に、国際社会の一人であるという自覚を持って国内外で生じている人権課題に目を向ける必要があるとの認識の下に、国際感覚を養うことが重要である。また第二の特徴は「平和」を重視している点である。歴史的に、堺の人々は、戦争が生じるたびに、その復興に努力し、平和の重要性を実感してきたことを踏まえ、これらの価値を盛り込んだところである。

 条例の具体化に関しては、2002年に既存の組織を「人権施策推進本部」に改組した。ここでは、人権施策に関する基本時効に関することや、人権施策推進事業の連絡調整を所管している。また、条例に基づく「人権施策推進審議会」の立ち上げのために、人選を行っているところである。また、基本方針・推進計画については、既に「人権施策推進基本方針」(2003年)「人権施策推進計画」(2005年)に策定しているが、今日の社会情勢を踏まえて、条例の趣旨に沿った推進計画を策定する予定である。また、施策の進行管理については、上記審議会に委ねる予定である。現在の課題としては、施策の実施評価についての指標策定をどういう考え方で行うかを検討する必要がある。

〈第5報告〉

 長野県 東御市は2004年4月、東部町と北御牧村が合併して成立した。その際に第1次総合計画において、10年後の東御市についての基本理念と基本方針を示したが、ここに「一人ひとりを尊重するまちづくり」を進めることとした。これに基づき、2004年12月「人権尊重のまちづくり条例」を制定した。それに伴い、「人権と暮らしについての意識調査」を実施し、2006んには基本方針と基本計画を策定したところである。前身の2町村には既に人権条例が制定されていたが、これらはいったん廃止し、新市において新たに条例を策定したところである。条例においては、市の責務、市民の責務を明示し、第四条において人権尊重の基本理念、人権意識の高揚、人権課題ごとの施策、その他人権尊重のまちづくりに関する基本方針を策定することとした。この基本方針その他人権施策の調査審議推進を行うために人権尊重のまちづくり審議会を設置することとし、様々な立場の方に委員をお願いしている。

 条例制定後、職員を対象として条例の概要や意識調査の結果について研修している。また、広報誌や教員向けの冊子に条例についての記事を掲載し、普及宣伝を図っている。

 なお、市の職員は400名ほどであるため、体制を細かくしてしまうと却って会議が多くなりすぎるというきらいがある。また、県の体制として、人権に関する体制が整備され、市町村をまとめてもらえればありがたいと考えている。

(文責:李嘉永)