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2004.12.13
意見・主張
  
「人権教育のための国連10年」を踏まえ、
「人権教育のための世界プログラム」の創造を

友永 健三(部落解放・人権研究所所長)

世界中に人権文化を創造することをめざし、1995年1月から開始された「人権教育のための国連10年」(「国連10年」)も、本年末で終了します。

この間、1人権教育の重要性に関する関心が高まった、2各方面でバラバラに取り組まれていた人権教育の連携が作りだされてきた、3人権との関わりの深い教員や公務員、警察官や検察官、医療や福祉関係職員、マスメディア関係者などに対する人権教育の必要性に関する認識が高まってきた、4被差別者の人権を重視することの必要性が理解されてきた、5国や自治体などで「10年」にちなんだ行動計画が策定されてきた、などの成果を上げてきました。

しかしながら、国内外の人権状況をみたとき、世界中で人権教育を実施することによって人権文化を創造し、差別や人権侵害、さらには戦争をなくそうという目的は、未だ達成されていないといわねばなりません。

この10年を振り返ったとき、1人権教育に取り組んでいない国や自治体、さらには分野がある、2計画が策定されているところでも、具体的な差別や人権侵害をなくし、人権が尊重された地域や職場を作っていくための行動と結びついていない、3特定職業従事者の中で人権教育を推進していくためのテキストやカリキュラムが作成されていない、といった問題があります。

国連人権委員会は、本年4月、「国連10年」終了後の2005年1月から「人権教育のための世界プログラム」(「世界プログラム」)として引き継いでいくことを求めた決議を採択しています。「世界プログラム」の内容は、3年程度の期間を定め、人権教育を推進していくための一つの重点分野を設定した計画を積み上げていくというもので、最初の3年間(2005年1月から2007年12月)は、初等・中等学校教育制度における人権教育の推進に重点を置くこととしています。

「世界プログラム」の案は既に公表され、12月10日国連総会で採択されることとなっていますが、「いじめ」や「不登校」の現状を見たとき、日本においても、この機会に初等・中等教育における人権教育の推進を強化していくことが求められています。

初等・中等教育における人権教育は基本となるものですが、これだけでは不十分です。たとえば、2000年12月6日、公布・施行された「人権教育・啓発推進法」では、3条で「学校、地域、家庭、職域その他様々な場を通して」人権教育・啓発を推進していくことを求めています。

「国連10年」の総括を踏まえた今後の課題としては、1あらゆる分野で人権教育に取り組むこと、2このため、あらゆる分野で体制を整備し計画を策定すること、3それぞれの分野でテキストとカリキュラムを作成すること、4具体的な差別や人権侵害を克服し、人権が尊重された地域や職場を創造していくことに役立つものとしていくこと、が求められています。

折しも来年2005年は、第2次世界大戦が終了して60年ですし、内閣同和対策審議会答申が出されて40年の年にもあたります。こうした節目の年に、「世界プログラム」がスタートしますが、この機会に初等・中等教育をはじめあらゆる分野で人権教育を推進し、差別と人権侵害のない平和な社会の創造にむけて努力していこうではありませんか。


(注) なお、12月7日、大阪市・大阪国際交流センターにおいて、これまでの人権教育の成果や課題について分野別に経験交流・意見交換を行う等、この「世界プログラム」に連動した取り組みとして「世界人権宣言56周年記念大阪集会」を開催しています。

(問合せ先) TEL 06-6568-7337