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2005.01.21
意見・主張
  
解放新聞 第2203号(2005年1月24日) より
緊急対談

スリランカ・インドの津波被害者に支援を

ニマルカ フェルナンドIMADR理事長
組坂繁之部落解放同盟中央本部中央執行委員長

  インド洋大津波が発生した2004年12月26日以降、みずから被災者でありながらも現地スリランカで救援活動に奔走しているニマルカ・フェルナンド・IMADR理事長が、来日した。2005年1月13日、組坂部落解放同盟中央本部中央執行委員長と対談し、スリランカでの被災状況、現場のニーズなどを報告した。組坂委員長は、部落解放同盟として全力で支援すると語った。

象徴的な支援活動で

組坂 ニマルカさんが無事で、ほっとしました。

ニマルカ 津波の起きた12月26日は日曜マーケットの日で、海岸沿いの被災地には内陸部からも多くの人が来ていました。私はたまたま内陸部を移動していたので助かりました。被災地域では、私も友人を失いました。家族をなくした友人もいます。

 あまりにも予想し得ないことがおこりました。大きなショックと悲しみがあります。そんななか、迅速なIMADRの対応は、私たちを元気づけてくれました。感謝します。そして、みなさんとこのつらいニュースを共有し、スリランカの復興支援をはじめるため、日本に来たことの重要性を強く感じています。

組坂 大津波の被害にあいながらも、日本に来てくれたことに感謝します。

ニマルカ スリランカでは20年間、戦争によって苦しみ、国が破壊されました(注・スリランカ国内での民族間のあつれきで死者6万4千人、避難民100万人など大きな被害が出た)。休戦協定が結ばれて、これから発展できるかなあと、いろいろな働きかけをしてきました。今回の津波で、たった1日で、国が破壊され、希望がもてない状況になっています。ひじょうに残念です。

 私たちは「tsunami(津波)」を知らなかった。日本のように、自然災害の早期警報システムがありませんでした。

組坂 大変な被害が出ていますね。

ニマルカ 報道されているように、スリランカだけで3万人が亡くなり、100万を超える人びとが避難民となっています。国が受けた被害にたいしてすべての責任を負うことはむずかしいですが、私たちはできることをやっていきたいと思っています。私たちの課題として、こういうときこそ被差別者を支援していきたい。それを象徴的にやっていくことが、重要だと考えています。

組坂 私たちも、部落解放同盟として、できる限りの支援をしていきたい。


女性や子どもに被害

ニマルカ 東海岸一帯から南海岸にかけて被害が集中しています。東海岸地域の漁業地域には、漁民(低カースト)の人たちが多く住んでいますが、ボートなどの漁具が破壊され、生活が破壊されています。今後、漁具を供給するなどの支援をしていかなければと考えています。漁民たちは、被害にあった当日は沖に出ていたので無事だったんですが、帰ったら村が破壊されていました。

 また、女性や子どもに多く被害が出ています。死者3万人のうち、約9000人が子どもです。そして多くの子どもが人身売買のために、誘拐されています。いま、それをさせないようにポスターを配布し、周知徹底をはかっているところです。今週、学校が再開しましたが、被災地では教材や文具が流され、子どもたちが勉強できないといった深刻な状況があります。子どもたちのために、教材や文房具など支給する必要があります。また、子どもたちのためにおもちゃをいくらかもってきて欲しいと仲間からの要請もあり、私たちは避難キャンプにおもちゃや甘いお菓子などをもっていきました。おもちゃをもっていったことで、とても驚かれましたが、子どもたちが楽しそうに元気に走り回る姿をみて、「避難キャンプに来て以来、子どもが嬉しそうな姿を見るのは初めてだ。キャンプがにぎやかになった」と、人びとはびっくりしていました。

 IMADRは、大規模な復興事業をおこなう救援機関ではないですが、私は地域に根ざした活動が重要だと思っていて、部落解放同盟は地域に根ざした活動をされているので、今回、これまでIMADRで活動してきた経験が役に立っています。

組坂 政府の対応は。

ニマルカ 政府からの物資が動き出したのは、私たちが被災者と接触してから、かなりたってからでした。政府からの救援活動が遅かったので、それまで緊急の救援活動に飛び回りました。政府による救援活動が、政治的なショウ(見せ物)のようになっていることについて心配しています。政府は、軍の将校を各地へ配し、支援にあたらせていますが、政府は今回の津波を通じて、さらに軍事化による支配強化をはかっています。そのことにたいして、きちんと働きかけていきたいと考えます。

 女性や子ども、社会的に差別されてきた人びとなどをはじめ、支援が必要な人すべてに、政府や国際機関からの支援がしっかりいき届いているのか、政府にたいして働きかけをおこなっていきたい。

 救援活動について、中長期的に考えると今後の課題は膨大です。しっかり情報収集し、ボランティアや物資の供給など、本当に救援が必要な地域に重点を置いてやっていきます。できれば早い時期に、部落解放同盟の人を招き、スリランカの状況を見てもらいたいと思っています。

組坂 このあと、新潟中越地震の被害救援に募ったカンパを新潟県連に渡しにいきます。今回の地震と津波の被害にたいしても、部落解放同盟として各都府県連にカンパを要請し、ニマルカさんに持って帰ってもらいたい。また、タイミングをはかって、状況を知るため現地に赴きたい。

ニマルカ 支援金について、お金以上のものがあると思っています。私自身、IMADRでの経験のなかで、部落解放運動から多くのものを学びました。地域に根ざした運動をすすめていきます。「私たちにできること」に焦点をあてて、地域レベルの活動を念頭に置いて、行動したい。


ニマルカ・フェルナンドIMADR理事長

  とくに女性の人権に焦点をおいて活動するスリランカの人権活動家・弁護士。スリランカでは内戦にともなう国内避難民女性の支援、湾岸地域への移住労働女性の支援、国際的には人身売買撤廃に向けての地域的な枠組み作りのための活動やNGO間の連携の促進などにとりくんできた。スリランカにある平和と民主主義のための女性連合代表、IMADR理事長。

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