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2006.05.17
意見・主張
  
第2回 識字活動支援「安田識字基金」助成対象事業の審査結果について

  1991年12月に安田信託銀行(当時)の公益団体である安田和風会が創設、日本国内とアジア中心に識字活動を支援してこられた「同和研修10年記念安田識字基金」から半額の寄付を受け、「安田識字基金」の名称で研究所として2005年度に開始した標記助成事業は、第2回となる今回、募集時期を早め、新年度からの事業開始に合わせて助成できるようにした。

  前回同様、研究所の他に『解放新聞』中央版・大阪版、「ヒューライツ大阪」やIMADR、識字・日本語センター等のご協力で告知を行い、1月末〜2月末までの間に国外から1件、国内から5件の応募があった(うち国内の1件については申請辞退された。1年の助成額は、国内・国外ともに1件あたり最大50万で、国内・国外それぞれの総額は最大100万円である)。

  3月27日に開かれた選考委員会(上杉孝實・内山一雄・榎井縁・友永健三の全委員が出席)で、5件の応募について審査を行った結果、次の事業助成が決定した(応募順)。

〈国外〉
IMADRアジア委員会(継続。スリランカ)によるスリランカ・ゲール地区の紅茶農園労働者コミュニティとスリランカ東部州のロディヤ(移動者)のコミュニティにおける「識字を通じたエンパワメント―我々の権利を主張する」事業に対し、助成限度額の50万円。

  イギリス統治時代にインドから連れてこられ、スリランカの多数派であるシンハラ人の私有農園で働き、今日なお最も識字率が低いゲール地区の紅茶農園労働者コミュニティ、および農業技術を持たないため、物乞いや魔術・占い等で糧を得、シンハラ人との婚姻が禁じられている東部州のロディヤ人(「移動する人」の意)のコミュニティは、ともに社会的差別・排除を受けて、貧困と非識字が再生産され、家庭内暴力やアルコール依存も高率でみられる。

  両コミュニティには従来NGOの支援もなかったため、特に子どもと女性を対象に教育プログラム開発を主眼とする3ヵ年事業が計画されている。1年目のプログラム実施のためのスタッフ間の情報交換と計画、住民対象のオリエンテーリングや討論、リーダー育成を基礎に、2年目は第2段階として、保健や健康、人権のための具体的教育プログラム、特にロディア・コミュニティにおける子どもや若者の識字プログラムの実施が課題とされている。

〈国内〉
今回新たに次の<1>〜<4>の4事業、また第1回段階ですでに継続助成が決まった<5>の1事業、あわせて5事業に、年度枠上限の計100万円を助成することが決定した。
<1>八尾識字日本語連絡会(継続。大阪府八尾市)による高砂日本語教室に対し、学習者教材・教具・文具費20万円、指導者用書籍費5万円として、25万円。

国際識字年の意義を広め市民の理解を深める目的で1990年以来、諸イベントやビデオ作成、市内在住の中国帰国者・渡日者の実態調査、読み書き交流会等の活動を行ってきた八尾識字日本語連絡会が、八尾市内に住む日本語学習希望者が居住地域で日本語を学べる場所を開設するとの趣旨で、前回の助成を受け、中国帰国者が多く住む府営高砂住宅内集会所で毎週土曜日の夜、地域の人々の協力も得て日本語教室が始められた。1年目は準備期間を経て、毎回15名〜20名規模で30回以上実施されている。
<2>(仮称)高槻メディア・リテラシー・プロジェクト(新規。大阪府高槻市)による「若い人々への識字教育―メディア社会を生き抜くためのメディア・リテラシー」事業に対し、予算額全体のうち青少年交流センター事業費を除く20万円。
<3>日韓交流ハウス(新規。大阪府大阪市)による「日本語識字活動を基本とした脱北者の定着支援事業」に対し、日本語講師料の一部として21万円。
<4>在日のハルモニたちが学ぶ青春学校(福岡県北九州市)による「識字の成果としての「自分史」の執筆支援―自らの人生と歴史とをつなげる想像力の獲得にむけて―」事業に対し、自分史執筆支援費等として、1年目と同額の10万円。

青春学校は、夜間中学がない九州で、高齢の在日韓国・朝鮮人の識字学習の場として1994年開設され、ボランティアの自主運営によって毎週1回の識字学習(ペア学習)、交流活動や文集作成等を行ってきた。厳しい環境にあっても逞しく生き抜いてきた非識字者のライフヒストリーを一定の訓練を受けたスタッフが記録していく事業と、ペア学習のなかで学習者自ら自分史を綴る事業を同時並行で進める3ヵ年計画である。1年目は事業開始に際しての特別学習会やスタッフ研修、聞き取りとテープ起こしに着手され、2年目はテープ起こしと自分史執筆支援中心に進められる予定である。
<5>ききとり識字教材化委員会(継続。大阪府大阪市)による「被差別部落の女と唄」の再構成と新たな識字教材の創造の事業に対し、語りと唄の聞き取りMDからの原稿化・再構成の2年目の作業について原稿料として、24万円。

大阪府内被差別部落でのききとりを『被差別部落の女と唄』にまとめた多田恵美子さんと研究所識字部会を中心とするききとり識字教材化委員会で、1975年頃以降の語りや唄を収めた247本のMDから、語りの生きた言葉を活かし、識字学習に使いやすい30本ほどの短い文章にまとめ直して教材化する3ヵ年の事業計画の初年度は10本のMDから5作品がまとめられ、2年目はさらに月に1作品を目標に進められる予定である。

(事務局)