トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張>本文
2008.03.31
意見・主張
  

部落解放・人権研究所第67回総会を開催しました

2008年2月25日、浪速人権文化センターにおいて、当研究所第67回総会を開催しました。ここでは、議事の概要をご紹介します。

 開会に当たって、寺木理事長より挨拶がありました。寺木理事長は、2008年が世界人権宣言採択60周年にあたることに触れて、国際連合が人権の確立に努め、その中で部落差別やカースト差別を含む職業と世系に基づく差別の撤廃に向けた取り組みがすすめられており、研究所として協力していくこと、財政改革とは人権や命、暮らしに関わる府民の政治のために行うことである点を強く訴える必要があること、今後の研究所の研究課題について検討会を立ち上げ、検討を進めることが重要であるとしました。

 定款に基づいて、寺木理事長が議長を務めることをアナウンスした後、書記と議事録署名人を任命し、来賓の組坂繁之さん(部落解放同盟中央執行委員長)、宮花信二さん(大阪市人権室長、代読)から挨拶を頂きました。

 その後、第1号議案として、友永健三理事・所長から2008年度事業計画案が提案されました。内外の情勢や部落問題に関する現状に触れた後に、研究所の主要な事業として14点をあげました。「世系に基づく差別」「職業と世系に基づく差別」の撤廃に向けた取り組みとして、原則と指針の普及・宣伝と実施を求めていくことなどとしました。「人権教育のための世界プログラム」に関連した取り組みとしては、初等・中等学校における人権教育についての取り組みが2年間延長されたことを受けて、国連の動向を把握し、かつ「人権教育の指導方法等に関するあり方・第3次とりまとめ」の積極面の活用に向けて取り組むこととしました。 「人権侵害救済法」の早期制定等に向けた取り組みとして、鳥取県人権侵害救済条例の見直しと早期施行に向けた取り組みを支援し、千葉県障害者差別禁止条例や日弁連の国内人権機関の制度要綱などについて研究していくこととしました。部落問題解決に不可欠な実態調査の実施に関しては、国勢調査結果を用いた実態把握の事例など、各自治体での実体調査結果を分析し、今日の部落差別の実態を明らかにすることが提案されました。部落差別撤廃行政や人権行政のあり方については、特措法終了や不祥事を契機とした人権・同和行政の後退している現状を踏まえ、大阪市人権施策推進審議会の答申の積極面を活用できるよう研究していくとしました。人権のまちづくりについては事例集の作成や人権条例の具体化について強く訴えていくこととし、部落地名総鑑・戸籍不正入手事件等に関する取り組みとしては、戸籍請求の際の本人通知制度を導入するよう働きかけるとしました。インターネット上での差別宣伝・差別煽動に対する取り組みについては、愛知の事例を踏まえて、実態把握と根絶に向けた方策、さらには諸外国の動向について研究するとしました。その他、司法の民主化・狭山第3次再審に関連する取り組み、部落解放運動再生に向けた中央理論委員会への参画、国際人権大学院大学実現に向けた、世界各地や日本国内での大学院人権コースの調査研究、「大阪の部落史」第10巻通史編の発刊等に向けた取り組み、世界人権宣言60周年に関連した取り組みについて提案されました。第1号議案については、若干の質疑が行われた後、異議なく可決されました。

 第2号議案2008年度予算に関しては、養父知美理事より提案されましたが、大阪府における財政再建に関わる動向によっては、大幅な変更もありえるとの言及がありました。その点を踏まえて、第2号議案は、異議なく可決されました。

 第3号議案(2008年度体制)、第4号議案(研究所創立40周年記念事業)、第5号議案(2008年度基本日程)については、中川健一理事より提案されました。研究所体制については、人権部会長が森井暲先生から大川一夫先生に、識字部会長が内山一雄先生から森実先生に、同部会副部会長が森実先生から岩槻知也先生に変更することが提案されました。また、40周年記念事業については、部落史の主要な項目を網羅した出版物の発行、部落問題に関する内外の若手研究者のワークショップ・シンポジウムの開催、記念集会などについて提案されました。これらの3議案が一括して採択に付され、異議なく可決されました。

 さらに第6号議案として、正会員の会費が、研究所紀要の発行部数変更に伴って、7000円から5000円に引き下げることが提案されました。第6号議案についても、特に異議なく可決されました。

 議事が全て終了した後、北口末広理事より、閉会の挨拶がありました。今日の危機的な状況において、限られた人材、資金、時間の中で、何が最優先課題であるかを見極め、山積する課題を順序良く、かつ確実にこなしていくことが重要であり、研究所に於いては、部落差別の現実がいかにあるかということが、研究を通じて明らかにすることが重要だとしました。

『部落解放運動への提言〜一連の不祥事の分析と部落解放運動の再生に向けて』について

上田正昭さん(部落解放運動に対する提言委員会座長、京都大学名誉教授)

 第67回総会終了後、記念講演として、部落解放運動に対する提言委員会の座長を勤められた上田正昭先生から、提言の内容についてご講演いただきました。ここでは、その要旨をご紹介します。

 一昨年、飛鳥会問題を初めとして、一連の不祥事が大きく取り上げられた。その際、戦後の部落解放運動の最大の危機であると案じていたところ、解放同盟中央本部より、提言委員会のメンバーとなるよう要請があった。

 2007年3月5日に第1回の会合が開催され、その際満場一致で座長をせよということになった。11月26日まで、計7回、熱心に討議をして、沖浦和光先生に提言起草のための小委員会を構成していただき、最終的に12月12日、組坂委員長に提言を提出した。

 私自身がはじめて部落問題に接したのは1949年に京都の高校で歴史の教員をしていたが、その際生徒会役員選挙に関わって部落差別事件が発生し、京都の部落解放委員会による糾弾会が組織された。新憲法の下にあっても部落差別が存在することを学び、そこから部落問題・部落史研究を進めてきた。

 その後の部落解放運動は、生活実態に差別があり、市民的権利が保障されなければ、部落は解放されないということを、提起してきた。その結果教科書無償運動、奨学金運動など、大きな成果を上げてきた。しかし、他方で大きな欠陥があった。このことを率直に認めなければならない。今回の提言に際して、私は6点の提言を行った。

 まず第1に、部落解放同盟は、部落第一主義を克服して、地域に根ざした人権のまちづくりの中核になるべきだ、という点である。第2に、国際連帯に関わっては、アジアの視点が欠落している。アジアの最も近い国の被差別民衆との連帯を重視すべきだとした。第3に、これまで33年間にわたり特別措置法に基づく同和対策事業が展開されてきたが、その結果、事業が目的になっている嫌いがある。本来の人間解放という原点に立ち返る必要がある。第4に、1993年に同和対策事業総点検運動が展開されたけれども、これは停滞ではなく挫折したと認識すべきである。第5に、1981年にも北九州の土地転がしという不祥事が発覚したが、その際にも、己の襟を正すべきだと述べた。この時に徹底的に自己批判しておれば、今日の不祥事は防げたのではないか、この自己批判のために、運動理論とあわせて、規約の改正を行う必要があるということである。第6に、いわゆる「差別の痛み論」が、他者の共感を呼ぶことができず、他者を疎外する理論になっているのではないかとした。

 これらは私の個人的な意見であり、これをたたき台として、他の委員のみなさんにも意見を出していただき、提言をまとめた。じっくりお読みいただきたい。

 今回の一連の不祥事は偶発的なものではない。一部の支部は、支部活動を私物化して、大会も開かない、会計監査もおいていない。これは、同盟規約に支部大会の開催や会計監査の設置が明記されていないという点に起因するといえる。

 また、同盟だけではなく、行政にも責任がある。自ら部落問題解決の展望を持って、同和行政を展開してきた自治体がどれほどあるだろうか。自らの主体性でもって行政を推進していないから、同盟の幹部と癒着するという状況が生まれたのではないだろうか。その結果、心有る市民の共感を、運動も、行政も呼び起こすことができなかったのである。

 これらの課題を克服するためには、中央本部の指導性の確立や人材の育成、規約の改正などを行う必要があるが、何より、魅力ある解放運動を展開していただきたい。反差別の運動、人権問題に関する運動との連帯だけではなく、人権のまちづくりの中核として、活躍していただきたい。人権文化の創造の担い手になっていただきたい。かつて庭造りという素晴らしい文化を河原者が担ったが、その第一人者が「と家に生まれたのを悲しむが、だからこそ命を大切にする」といった名言を残した。そのような素晴らしい、新たな文化運動を展開していただきたい。規律ある、信頼される、誰が見ても透明性のある運動を展開する必要がある。自力自闘で、周りを巻き込んでいくという行動方針を立てていただきたい。水平社の「人間性の原理に覚醒し、人類最高の完成に向かって突進する」という素晴らしい綱領を思い起こしていただきたい。