トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張>本文
2009.10.30
意見・主張
  

社会啓発連続学習会を終えて

5月22日から7月17日の間、5回にわたって「社会啓発連続学習会」をおこなった。これは、昨年度中に制作された人権啓発のためのVTRやDVDについて、都道府県、政令指定都市、啓発センター、研究機関、映像制作会社を対象とした全国的なアンケート調査を実施した上で、様々な人権課題にわたる15作品を選んで鑑賞と合評を行うものである。

視聴覚教材は、人権啓発の活動において、かなり古く(初期のころ)から使われてきたが、それを視聴するだけで数十分の時間を消費するため、便利な一方で、時間に制約のある研修ではそれだけで終わってしまう可能性をはらんでいる。

法期限切れ以後の社会情勢(たとえば「同和」という用語を避ける傾向など)や、女性、子ども、高齢者、外国人など、人権(差別)問題の概念が広がりを持つようになったことによって、今回のアンケート調査でも明らかなように制作する側の意識や教材の内容も年々変化していることがわかる。

加えて、学習方法も、参加型学習などが普及してきたことによって、制作の手法もずいぶん工夫されてきている。

たとえば、「親愛なる、あなたへ」(企画:財団法人兵庫県人権啓発協会 制作:東映株式会社)という作品は女性・子ども・高齢者・地域社会などをテーマにしたドラマであるが、この作品には「活用ガイド」という小冊子が用意されており、話し合い学習の恰好の手引きとなっている。

参加者の主流が企業関係者であったことによって職場(企業)での研修に有効かどうかが問われざるを得なかったが、今回取り上げた作品の中には企業よりは学校で使うのが有効でありそうなものや、地域活動に向いているもの、入門編として優れているもの、子どもが観ても耐えられるものなどがあり、使う場面や対象によって、もっと幅広い分析が必要とされるのではないだろうか。

(文責・浮穴正博)