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2009.10.30
意見・主張
  

人権尊重のまちづくり講座2009(福井県高浜町)

はじめに

福井県高浜町では、1994年12月に人権尊重のまちづくりと明るい地域社会の実現をめざして「人権尊重の町」宣言を行い、1996年7月には「高浜町人権擁護に関する条例」を制定した。さらにその後、「『人権教育のための国連10年』高浜町行動計画」の策定(2002年6月)、「高浜町人権教育・啓発に関する基本計画」を策定(2006年7月)するなど、高浜町に住む誰もが日常生活のさまざまな場面において人権の大切さを認識し、人権が尊重されるまちづくりに取り組んでいるが、2009年7月から8月にかけて「人権尊重のまちづくり講座2009」が開催された。この企画には、研究所リエゾンセンター準備室も参画・協力した。

講座の内容

講座は、高浜町に在住・在勤する人を対象に、高浜町での人権啓発推進リーダー育成を目標に7月から8月の火曜日、合計5回、高浜町三松センターにて開催された。1回の受講者は15名程度。

1.人権(尊重)のまちづくりって何だろう(7月14日)

連続講座を進めるにあたって、「人権」「文化」「人権文化」「まちづくり」「人権のまちづくり」等、用語についてどういう内容を意味しているのかについて学び、とくに部落解放運動と自治体の人権行政の立場からの「人権のまちづくり」について学習した。

2.各地で創り始められた人権(尊重)のまちづくりを知ろう(7月28日)

高浜町のまちづくりネットワーク、部落解放同盟のまちづくり運動部で集約している、部落を含めた「人権のまちづくり」の取り組みやその他のコミュニティを軸にした取り組みについての事例を学習した。

具体には、長野県木島平村、大阪府大東市、大阪府貝塚市、大阪府茨木市、愛知県名古屋市、徳島県上勝町等における、人権条例の具体化を軸にしたまちづくり、学校(教育)を中心としたまちづくり、福祉運動を軸としたまちづくり、コミュニティビジネスからのまちづくり等について学習した。

3.まちづくりの手法を体験しよう(1)(8月4日)

まちづくりの場において活用されているワークショップを実際に行いながら学習した。とくにまちづくりにおいては単発よりも継続したワークショップが行われているので今回も2回連続して行われた。

第1回目は、「課題発見編」として地域における子育てをテーマにいろいろな課題や問題点についてポストイットを使用、課題・問題点についての整理が行われた。

4.まちづくりの手法を体験しよう(2)(8月11日)

第4講は、前回のワークショップで出てきた子育てに関する課題について、「自助・共助・公助」を意識した問題解決の方策についてワークショップを行った。つまり、自分でできること、公的機関・施策でない家族や近所同士でできること、制度として公的機関がすべきこと・やってほしいことについて、時間の関係で大雑把ではあるものの問題解決の整理をしていった。

5.自主講座 (8月18日)

講座やイベント・行事の活性化をテーマに、単発のワークショップを行った。「なかなか人が集まらない」、「同じ顔ぶれ」、「他にも似たような行事がある」等の意見が出され、それらを整理した上でその解決の方向性について議論した。担当者の熱意、「PDCA」サイクル的発想、スキルアップの努力、情報収集、日常活動の活性化、等が議論のまとめとして要約された。

おわりに

受講者それぞれの仕事等の都合で全5回受講者は少なかったものの、とくにワークショップではそれまで会合であまり発言しなかった人が積極的に発言したり、アイデアを提案されたりする場面も見られた。他の方も午後7時から9時半まで毎回熱心に受講されており、これは毎年いろいろな工夫をしながら人権教育・啓発の取り組みをされている三松センター(職員)の熱意と努力によるところが大きいものと思う。敬意を表すとともに、今回の企画に関われたことにあらためて感謝したい。

なお、高浜町ではこれまでにも「高浜町人権教育・啓発に関する基本計画」の周知やさまざまな人権課題について高浜町の現状把握などをねらいとした「人権フォーラムたかはま2007」(2007年)、各人権課題に共通するテーマとして「差別や偏見をなくそう」「いじめ、暴力をなくそう」などの3テーマで分科会を開催し、全体会として「ヒューマントーク」と題した人権トークショー(2008年)を開催している。

さらに、会場となった三松センターでは今年第4回目を迎える「いのち・愛・人権フェスタ」(三松センター主催、いのち・愛・人権フェスタ実行委員会主管)が9月下旬に開催されることになっている。

(文責・松下龍仁)