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2010.01.18
意見・主張
  

関西学長、人権・同和問題担当者懇談会を開催


 2009年度第1回関西学長、人権・同和問題担当者懇談会が、2009年10月20日、大阪人権センターで、20大学22人が参加して開催された。

 第一報告は、「「土地差別調査事件」から見る現代の部落問題とは?-人権確立社会をめざして」をテーマに、部落解放同盟大阪府連合会書記長の赤井隆史さんよりなされた。

 2005年府民意識調査から見た人権状況について、「住宅を選ぶ際」には27.2%の人が「同和地区や同じ小学校区にある物件は避ける」、16.2%の人が「同和地区の物件は避けるが、同じ小学校区の物件は避けないと思う」と回答している。

 また、世間の人が同和地区出身者と判断する理由は、「住んでいる」「住んでいた」「本籍地」「出生地」「職業」の4つがポイント。「土地差別調査事件」の概要については、<1>"差別報告書"を作成したリサーチ会社とは、広告代理店から下請的に仕事を請け負う場合が多く、リサーチした報告書を広告代理店に購入して貰うという関係にある。<2>デベロッパー(マンション開発業者)に土地購入を決定するための基礎データとなる提案書を作成するのが、広告代理店業務の一部であり、ほとんどのケースが、無料による広告代理店業務のサービスの一環としてデベロッパー(マンション開発業者)へ提供されている。この提案書が採用されれば、マンション建設費の5%程度が広告料として広告代理店との契約となる。提案書の作成そのものは、ほとんど下請ヘアウトソーシングされており、広告代理店としては、リサーチ会社からの資料を一部加工し、提案書に仕上げている。<3>「提案書」の中に記載されている差別表現について、「地域下位地域」「一部敬遠される地域」「不人気地域」「低位エリア」という表現が、いずれも被差別部落を表現するための業界的"造語"として使われている。

 明らかになりつつある真相は、<1>マーケティングリサーチ会社のほとんどのケースに"差別表現"が見られ、リサーチ会社そのものの差別体質が浮き彫りとなってきている。<2>広告代理店→デベロッパー(マンション開発業者)による部落差別の表現が記載されている「提案書」の横流しが、どこからの指摘もなく、何十年間も行われてきた。<3>知っている限りの情報を提供するのが不動産屋の義務となっており、部落を表す差別表現が、「よく使われる業界用語」として常態化され、不動産業務のシステムの中に組み込まれている。<4>こうした"差別の数珠繋ぎ"構造が20年間以上にもわたって放置されてきた。

 第二報告は、「大阪の部落女性調査結果から見えるもの」をテーマに、部落解放・人権研究所の内田龍史さんよりなされた。

 2008年に部落解放同盟大阪府連合会が、(社)部落解放・人権研究所に委託し、大阪府内の47地区における被差別部落の女性を対象として独自にその実態を把握するために調査を行った。

 調査対象は、15歳以上の大阪府内の部落女性で、調査時期は、2008年7月15日から8月末で、有効回収数は個人票1314票・世帯票1173票。調査対象者の選定は支部ごとに行ったが、大阪府2005年国勢調査、大阪市2000年同和地区実態調査を参考に、年齢を割り当てる工夫を行った。調査項目は、世帯の状況、教育・識字・情報、福祉・健康、就労、生活意識・社会関係、部落問題、人権問題、母子家庭についてで、調査結果の特徴としては、結果として部落外居住層の把握ができたこと、安定層が流出し、不安定層が流入している可能性があること、年齢別に見る意識の違いがあること、若年層における就労の不安定化が指摘された。

 以下、パワーポイントを使って、調査結果の詳しい説明がなされた。

 「年齢別部落差別認識」「差別への不安」は40歳代が最も高い。高校・大学進学率は上昇してきたが、府平均との格差は縮小しておらず、高校中退率は高くなっている。「年齢別産業構成」「年齢別雇用形態」では、40・50歳代での医療福祉、公務の占める割合、正規の職員・従業員の占める割合が高く、これまでの雇用対策の成果が現れている。また、「年齢別正規雇用比率」「年齢別平均収入」では、40・50歳代で大阪府女性平均を上回っているが、元々男性と女性の大きな格差が存在していることを見ておかねばならない。若年層では不安定雇用が増えており、早急な対策が求められている。

 詳しくは、部落解放・人権研究所編『部落解放同盟大阪府連合会女性部調査報告書』(部落解放同盟大阪府連合会、2009年3月)を参照されたい。

(文責・本多和明)