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2007.09.03

新聞で読む人権
2007年7月

深刻化が続く母子家庭

  • 2007年5月23日 日本経済新聞 大阪 夕刊 児童扶養手当最多の98万人
  • 2007年6月18日 日本経済新聞 大阪 昨年度の母子家庭就業支援 奨励金支給、まだ25%

 2002年11月に「母子寡婦福祉法」「児童福祉法」「児童扶養手当法」「社会福祉法」の4つの法律が、改正されました。この法改正を受けて、これに先立つ2002年8月より、「児童扶養手当」は、年収(厳密には「所得」)上限に大幅な制約が設けられ、詳細は後記にしますが、受給対象者の縮小が進められます。

 そして、来年4月には受給期間が5年を超える児童扶養手当の受給者に対しては、最大で半額を減額することも決められています。

 こうした措置を踏まえ、翌年(2003年)7月には、「母子家庭の母の就業に関する特別措置法」が5年の時限立法として成立します。この法律は、児童扶養手当の支給制限の措置に対して、母子家庭の母の就業支援の特別措置を図ることがねらいとして掲げられました。

 ところが、支給制限にもかかわらず児童扶養手当の受給者は伸びつづけ、その一方で、母子家庭の母への就業支援は決して芳しいものになったとは言えません。

 厚生労働省が5年に一度実施している「全国母子世帯等調査」では、母子世帯数が調査毎に増加してきています。直近のデータでは、全国の母子家庭は、122万5400世帯(2003年現在)に上っています。

 児童扶養手当の受給者数も、毎年増加の傾向を辿り、2007年2月末現在で98万7450人となりました(厚生労働省「社会福祉行政業務報告」)。

 児童扶養手当は、前述のように受給者の所得によって支給額が定められており、「全部支給」と「一部支給」とに区分けされています。子どもの数や扶養親族の状況により計算式は変化するのですが、仮に子ども1人のみの母子世帯の場合には、おおよそ年収が130万円未満(所得では年57万円未満となります)の場合にのみ「全部支給」となります。

 また、児童扶養手当の額は、年度毎に消費者物価指数に応じて改訂され、2006年度における「全部支給」は月額4万1720円で、「一部支給」の場合は、4万1710円から9850円までの10円きざみでの細かなものとなっています。

 受給者内訳では、「全部支給」が60万1168人、「一部支給」が38万6282人(厚生労働省「社会福祉行政業務報告」)となり、6割以上の受給世帯が、目安として年収130万円以下と推定される可能性のある厳しい数値実態となっています。

 先に紹介した2003年の「全国母子世帯等調査」では、世帯年収の平均が212万円でした。ちなみに同時期の一般世帯平均年収は589万円でした。

 また、同調査で判明した就業率は、実に83%という極めて高い就業稼働が示されています。自立支援という言葉は、耳障りのいい言葉ですが、様々な施策は有効に機能しえていない証として、母子世帯の収入の低さが表れ、児童扶養手当の受給者増となっています。

 児童扶養手当の切り捨て実施は、来春に迫っているという経済的にも社会的にも厳しい母子家庭世帯の実態が存在しています。