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2007.11.28

新聞で読む人権
2007年11

日々派遣や細切れ派遣の禁止を

  • 2007年10月5日 朝日新聞 大阪 派遣規制労働側が攻勢 登録型「原則禁止を」 法改正へ

 厚生労働大臣の諮問機関である「労働政策審議会(会長:菅野和夫・明治大学法科大学院教授、以下「労政審」と略す)における派遣労働法(正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」と言います)の改正論議が動きはじめました。

 論議をしているのは「労政審」の「職業安定分科会・労働力需給制度部会」、労働者派遣制度に関する検討課題は大きくは4つ、1.派遣労働者の雇用の安定、2.労働力需給調整機能の強化、3.派遣元事業主・派遣先事業主の講ずべき措置、4.適正な労働者派遣事業の運用の確保、についてです。1.の「派遣労働者の雇用の安定」の項目の中には、(1)登録型の派遣労働(2)日々雇用の派遣労働(3)常用雇用型の派遣労働(4)派遣受入期間・派遣労働者への雇用申込義務と、さらに区分され、論議は進められているさなかです。

 派遣労働法における派遣の形態は、大きくは2つに分かれます。

 1つは、登録型(一般労働者派遣と言います)と呼ばれるもので、派遣労働の大半がこの形態を占めているものです。もう1つは、常用型(特定労働者派遣と言います)と呼ばれ、派遣元(派遣業者)に常用雇用されたうえで、派遣先(受入企業)において働く形態のものです。

 論議の焦点となっているのは、派遣の大半を占める「一般労働者派遣」についてです。

 「一般労働者派遣」は、前記のように、俗に「登録型」と呼ばれ、登録イコール就業ではありません。そのため、登録している人と実際に派遣で働いている人の数との間には、かなりの誤差が生じ、仕事のない登録者が常に存在している状態が続いています。

 また、登録により就業状態にある派遣労働者には、派遣契約期間の短期化がますます顕著になっており、いわゆる「細切れ契約」が問題となっています。そして、細切れの究極が一日単位での契約での派遣、「日々派遣」とか「スポット派遣」と呼ばれる形態で、今や大きな社会問題としてクローズアップされていることがらです。

 先々月のこの欄に「ネットカフェ難民」に関する実態調査が実施された報告を掲載しました。実態に比して氷山の一角であるが垣間見えた問題は、ネットカフェやマンガ喫茶等を寝床として転々とするホームレス状態で働く人々の多くが、この「日々派遣」「スポット派遣」で働いているという事実でした。

 これらの状態が、大きな社会問題であるにもかかわらずまかり通っている現実の背景のひとつには、現行の労働法が追認し、この社会問題のカベとして立ちはだかっていることが挙げられます。派遣労働法第40条の2においても、また根幹となる労働基準法第14条においても、雇用契約期間の上限規定は存在しますが、下限の規定は存在していません。つまり、社会道義上許されない「日々派遣」等は、労働法上では違法ではない状態にあります。

 公表されているデータに基づくと、派遣労働者の数は約255万人とふくれあがっています(2006年12月26日厚生労働省発表「平成17年度・労働者派遣事業報告書」より)。これは、一般労働者派遣のうち、常用として派遣されている人が約45万5千人、登録している人が約193万4千人、一方、特定労働者派遣(派遣元で既に雇用されていて、派遣先で働いている)の約15万7千人の合計数となります。

 この数値を先ほどの問題点とリンクさせて記すると、1.一般労働者派遣のうち「常用」とされている約45万5千人の人たちの契約期間がますます短くなり、更新を繰り返す細切れ派遣状態となっているという点がひとつです。実態として、3ヶ月未満の一般派遣は73.0%、これに6ヶ月未満を含むと91.0%となり、9割以上が6ヶ月未満の細切れと常態化しています。

 さらに、大きな問題となっているのが、「登録者」と呼ばれる約193万4千人の人たちの問題です。この193万4千人が、どの程度の就業をしているかというと、先ほどの公表データによれば「常用換算労働者」の数が明らかになっています。この数は62万6200人です。つまり、約193万4千人の登録者の実際の年間総労働時間の合計を、その派遣先で常用で(つまり正規雇用労働者)働く労働者の1人あたりの年間総労働時間でわり算をすると、62万6200人分となる、という数値です。約193万4千人の人たちがフルタイムで働いているとするならば、3日に1日以下しか仕事がない状態だと示している数値と言えます。

 元来、職業安定法では「労働者供給事業の禁止」(第44条)が謳われています。これは、「タコ部屋」などと呼ばれる奴隷労働や、ピンハネと呼ばれる中間搾取を絶滅させるために規定された条文です。1986年7月に成立した「派遣労働法」は、この職安法第44条に真っ向から対立する法律として成立しました。そのため、当初は、派遣が可能な職種を専門的な業務に絞り込み限定しスタートします(26業種限定)。これはポジティブリスト方式(派遣可能なものをリスト化している方式)と呼ばれていました。

 ところが、派遣労働法は、改訂に改訂を重ね、1999年には原則自由化(ネガティブリスト化への転換と呼ばれます)となり、2003年には、それまで上限が1年だったものが最大3年間まで延長され、2004年には製造業への派遣も認められることになります。

 こうした中で生じている「派遣労働」への違法のいくつかの実態を指摘します。

  1. 派遣労働者にとっては、派遣元(派遣業者)と派遣先(受入企業)との三角契約という異常な労働契約を結ぶことになり、結果、派遣業者のピンハネ(中間搾取)を奨励し、派遣労働者の受入企業にとっては、安上がりで首切り可能な労働力調整弁としての活用促進が、すべて合法と理解され、かつ実践されていること。
  2. 「事前面接の禁止」や「二重派遣の禁止」は、派遣業者にも受入企業にも通用しない慣行として違法認識がますます薄れていること。
  3. 派遣労働者にも当然の権利として保障されている権利、有給休暇、妊娠・出産への労働者保護の適用、仕事中のケガ等への労災適用等々が、派遣労働者だからと違法に適用されず、またとりわけ大企業においては適用外とするために意図的に細切れ派遣を促進させていること。
  4. セクハラやパワハラの恒常化や、営業としての接待係としてのセクハラ専用のために派遣労働者を使用する企業があること。その他、中途解除や違法解雇、偽装請負という違法派遣や、親会社のみに派遣する派遣子会社の「専ら派遣」や「二重派遣」など、一部を羅列するだけでも、違法との認知すら薄れて現実に行われている実態です。

 こうした結果、平成17年度報告に見る派遣業者の売り上げは4兆351億円(前年度比41%増)を超え、国の認可を受けている派遣事業所も3万を超えるまでに増加しています。

 そして今、「労政審」で労働者側が求めているのは、「細切り派遣」や「日々派遣」の問題を生み出す「登録型」の原則禁止です。つまり、合法内の社会問題化しているものにスポットがあたっています。この論議の立て方は、法改正を前提としなければ成立しない論議方法です。合法とされているものを禁止し、違法とする改正以外に道がない討議方法といえます。

 しかし、細切れ派遣、日々派遣を受け入れている企業と、4兆円産業にまで成長した派遣業者は、法改正反対の立場で、論議回避へ持ち込む危険性も大いに存在しています。