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2007.12.28

新聞で読む人権
2007年11

日本政府が障害者権利条約を署名し、国内法整備に着手しました。

  • 2007/09/29 朝日新聞 大阪 夕刊 障害者権利条約に署名 政府 早期締結へ法改正検討

 「障害者の権利に関する条約」は、2006年12月13日、国連総会において採択され、2007年3月30に署名のためにされました。この条約は、障害のあるすべての人のすべての人権と基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること、そして障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害を理由とする差別の禁止、社会への完全かつ効果的な参加、機会の平等、施設及びサービスの利用を可能にすること、男女の平等、障害のある子どもたちの能力・アイデンティティを保持する権利の尊重などが謳われています。また、この条約を実施し、認められる権利を実現するために、締約国はあらゆる適切な立法、行政その他の措置をとり、障害者に対する差別となる既存の法規範の修正・廃止、個人・団体・民間企業による障害を理由とした差別を撤廃するためのすべての適切な措置をとることを義務づけています。

 この条約は、様々な意味で人権条約として極めて先進的です。障害のある女性が複合差別を受けていることを条約上初めて明言していますし、この条約の実施やその他の障害者に関する問題についての意思決定過程に、障害者団体を通じて障害者と緊密に協議することを明記しています。さらには、国内における実施及び監視のための枠組みを維持・強化・指定・実施するよう義務付けていますが、その際には、「人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び役割に関する原則」(いわゆるパリ原則)が考慮に入れるべきこととし、さらにはかかる監視の過程に、市民社会、とりわけ障害者及び障害者を代表する団体が十分に関与し、かつ参加すべきこととしています。すなわち、国内人権機関の設置を検討すべきことを実定法上規定した点で、人権侵害の救済に関する実定法上の内容がより豊富になったと評価すべきでしょう。

 この条約については、日本政府は当初、国内法の整備が遅れていることを理由に署名を差し控えていましたが、2007年9月28日、署名することを閣議決定し、署名しました。条約法上、条約に署名することによって、条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わないようにする義務を負います。また、効力を発生するためには批准することが必要ですが、それまでの間に、条約に反するような国内法制の改廃が必要となるでしょう。そのための準備をしなければなりませんが、報道に拠れば9省庁で構成する「障害者権利条約にかかわる対応推進チーム」が発足しているそうです。

 確かにこのような制度の構築のために議論を進める必要がありますが、条約の規定にあるように、障害者に関わる意思決定過程において、障害当事者団体が関与・参加することを確保すべきではないでしょうか。そうでなければ、批准後、当事者から「十分な改廃が行われていない」との指摘を受けても、「十分である」との答弁を繰り返すこととなるでしょう。このような事態は、条約の趣旨に合致しているとはいえません。現時点において、当事者との十分な協議を経る必要があるのではないでしょうか。