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書 評
 
評者N.T
研究所通信254号掲載
善元幸夫・長尾彰夫編著

カリキュラム改革としての総合学習5「地域と結ぶ国際理解」

(アドバンテージサーバー、1999年2月、A4判159頁)

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 このシリーズを評しつつ5巻まで進んできたが、特に感じることは、それぞれの巻についてテーマでくくられてはいるが、それぞれのテーマが密接に関わり、リンクしていることである。まさに、総合学習の総合学習たるゆえんであろうと思う次第だが、この巻では特にそのことを感じた。それぞれのユニットは、環境、平和等のほかの課題と不可分のものであった。

 また、国際理解といったフィールドの広がりはともすれば人権の視点を欠いたものともなりがちであるが、本書では、人権の視点をふまえて数々のユニットが紹介されていた。大阪における解放教育の副読本「にんげん」において、初めて国際理解というテーマで教材が掲載されたのは、12年ほど前のことだったと記憶している。もちろんそれ以前にも、大阪には解放教育で在日韓国・朝鮮人の子どもたちをも視野に入れての優れた実践や教材があった。その際の反差別という視点は受け継ぎながら、国際理解教育も進められてきた。

 本書にもあるが、状況は変化している。日本には、ほとんどはアジアの人々であるが、たくさんの外国人が居住するようになり、就労するようにもなっている。しかしまだまだ、外国人と言えば欧米系の外国人を想起する日本人が多い現状のなか、これほどの情報化社会にあっても情報は一方的であり、外国人にたいする偏見、特にアジアの人々にたいするそれは、変わらないばかりかむしろ形を変えて複雑化し、根強いものになっているのではないかと思わざるをえない。

 本書には、ユニット、つまり、総合学習の具体的な展開例が示されている。しかし、実践を離れて本書を読んで自らの生き方に返す読み方も十分できるおもしろさをもっている。従って教師以外のものが読んでも興味深く、また、実践的な読み方ができるだろうし、学習を広げて行くための示唆も得ることができると思われる。そしてまた、このような発想もできるのか、ということを読みとった現場の教師は、是非本書を手がかりに様々な実践を生み出すことが可能であろう。

 一つ一つの学校は、通ってくる子どもも違い、学校をとりまく環境も違う。違いを大切にするならば、そのような各校で、同じでない実践が生み出され、リンクしあってこその総合学習であり、そういう発展の仕方によって、国際理解というテーマが生きたものとなっていくのではないか。