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書 評
 
評者N.T
研究所通信253号掲載
カリキュラム改革としての総合学習4

「環境にはたらきかける」

(アドバンテージサーバー、1999年A4判、135頁)

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 本書を読んで感じたことは2点ある。

 まず、1点目は「環境」の中には人間が含まれていなければならないということである。

 2002年からの総合学習を目前にして、何をすればよいかといった模索の末に環境をテーマにしてとりあえずやってみようといった学校は少なくない。しかし、その中で、生きている人間と対立的に環境の問題を取り上げるような実践の如何に多いことか。環境の問題は21世紀に向けて深刻であり、取り上げなければならない重要な課題であることは間違いがない。しかし、それがそこに生きる人間の生活、生き様を無視したものであってはならないだろう。「環境」と言う言葉によって野宿者を排除しようとする動きもある。「環境」が一方的に都合良く語られていないかどうか、要注意である。

 本書でその点興味深く読んだのは、「紙おむつと森林破壊」という教材であった。高齢化社会でますます需要の増える紙おむつ。森林破壊につながるから使うのを止めようといった一方的な解決法ではすまないジレンマをこの教材では提示している。これは環境の問題全てにつながる視点であろう。環境を考えるとき、そこで生きる人間の姿を想起すれば、現代社会の中でこれらの問題を解決するのは、とても困難である。そのような困難な問題に子どもを直面させ、環境の問題を極めて現実的に考えさせようとしている。

 2点目は、総合学習の中で如何に学力を付けていくのかといったことを考えたとき、環境の問題は1つの突破口になるかもしれないといったことである。楽しくなければ総合学習ではない。それはその通りであろうが、やはり、子どもの学力につながる総合学習にもしなければならない。分析できる力、調査できる力、観察できる力、判断する力、まとめる力、実行力、他にも様々な力を総合学習の中で伸ばされなければならないだろうが、環境というテーマの中に自然科学の分野での様々な力を伸ばすことのできる題材が沢山あると、本書を読んで思い至った。部落の子どもの学力の問題が引き続き問われ続けている今日、総合学習を通じて学力への展望を切り開くためには、環境の問題は視野に入れるべき一つの大切な位置をしめているのではないかと思う。