Home書評 > 本文
書 評
 
評者中村清二
研究所通信273号掲載
(社)関西経済連合会企業と社会委員会

企業と社会の新たな関わり方〜地域社会の活性化に向けて

(2001年3月5日、B5判35頁、非売品)

-----------------------------------------------------------------------------

 1999〜2000年度の2年間にわたって「企業と社会委員会」が検討してきた研究課題をまとめられたのが本書である。「はしがき」にも「合理性と効率性を第一義に考え、株主利益至上主義を信条とする米国企業が、環境、人権への配慮、雇用の公平性確保、地域社会への貢献といった、企業の社会的責任をも重視し、これに対して積極的な取組みを示しており、消費者や投資家の支持も得てきている」ことに特に注目したこと、こうした動きを先取りして「事業戦略や企業行動に組み込み、今後の競争力の強化につなげていくべきだ」と指摘している。

 そのために、(1)社会的に責任ある企業行動の実践に向けた具体的取組み課題を「ガイドライン」(別表)を提示し、(2)特に地域社会の関わりについては、本業の強みを活用し地域社会の発展に継続的にコミットしていくこと、NPOや行政とのパートナーシップを強化すること、などを提起している。

企業と人権・部落問題との関連性を考える上でも貴重な"提言"である。欲をいえば、「人権」がもう少し明確に位置付けられればとも感じたが。

また企業がこうした社会的責任を遂行していくことを支える、企業の情報公開やその社会的評価、社会責任投資などによる「誠実さ」の市場での競争力化、といった社会的条件づくりも指摘している。この点も重要な見逃せない点である。

いずれにしろ、こうした「ガイドライン」が個々の企業の中で着実に具体化され、そして社会から支持され大きな成果をあげていくことが期待される。

社会的に責任ある企業行動のガイドライン

目標
株主
  • 株主にとって魅力的な企業となること
  • 株主価値を一層重視した、競争力あるコーポレート・ガバナンスの追求
  • ディスクロージャーとアカウンタビリティの充実
  • 社会的責任投資(SRI)の広がりを認識し、中長期的な企業価値の向上に努めること
従業員
  • 雇用の創出に努めること

  • 人材育成・支援(キャリア開発の機会、エンプロイヤビリティの向上も)に努めること
  • 公正な労働慣行の実現
  • 職場環境の安全性の確立
  • 生きがいをもって働ける場の形成
  • 進出国における現地人の採用と公正な評価
顧客
  • 顧客のニーズや要望を受け止め、その品質に責任をもつこと

  • 製品の素材、製造方法、安全性に関する情報の公開
  • 顧客との信頼関係の構築
  • 環境や人権対策に関するグローバルな潮流の認識
環境
  • 経営活動の全プロセスにおいて環境保護・保全に努める環境マネジメントの確立(環境方針・実施体制の確立とゼロエミッション、省エネ・省資源の推進、循環型経済社会の実現等に努めること)
  • 環境リスクの認識
コミュニティ
  • 事業所が所在するコミュニティの社会的ニーズや文化・制度の把握と良好な関係の構築
  • グローバル・コミュニティ(国際社会)の抱える課題を理解し支援すること
  • 地域の市民団体やNPOとの交流と協働関係の構築
  • サイバー・コミュニティの広がりとその影響力の認識