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2004.12.13
書 評
 
内田 龍史

社会的に不利な立場に置かれたフリーター
- その実情と包括的支援を求めて (最終回)

 第7章「失業・フリーター状況にみるジェンダー」では、失業・フリーター状況にある彼女・彼らのライフコース展望について、ジェンダーの視点から分析が行われている。

 今回の調査対象者について、多くの女性には就業への強い動機づけが見られない。こうした状況に至る要因としては、低学歴による非キャリア志向・周囲の早婚傾向・正社員達成女性モデルの貧困があげられよう。女性は結婚という道筋が見えてしまうことによって、就業しなくてもよいという道を「主体的に」選択していくと言える。そして、経済力を身につけているフリーターではない男性を結婚相手の条件としてあげるのである。逆に、男性も結婚する場合には就業していなければならないという意識を持っており、フリーターでは結婚することができないという判断を下している。すなわち、男性・女性ともに結婚するからには男性が働いていないといけないという価値観が共有されている。

 ライフコースにおける結婚への展望は、ジェンダーの再生産装置として、社会的に不利な立場に置かれた彼・彼女らにより強力に機能しているのである。

 第8章「若者に対する就業支援政策の現状・課題とそのニーズ ― 社会政策・同和対策事業・地域就労支援事業」では、若者に対する就業支援政策の現状や課題、または若者自身から出されたニーズが分析されている。

 バブル経済の崩壊をきっかけに日本経済は長期にわたる景気後退期に入り、特に若者への労働需要が減退し、若者の職業観の変化も相まって失業率は大幅に上昇した。一方で、地方分権の推進により、これまで国や都道府県だけが取り組むものとされてきた労働行政は、労働者にとってより身近な市町村レベルにおいても実施されることになった。こうした市町村レベルでの就業支援として注目されるのが、大阪府の地域就労支援事業である。

 地域就労支援事業の中核となるのは、地域就労支援センターを拠点として活動するコーディネーターである。コーディネーターは相談活動によって相談者の状況を把握していることから、適切な求人情報提供が可能となっていた。また、相談者のスキルアップを図るため、委託訓練への誘導、資格取得に関する相談などにも応じており、地域就労支援センターは、支援を必要とする者がその場へ行くだけで様々なサービスを受けることができる「ワン・ストップ・サービス」提供の場となっていた。

 この事例では、コーディネーターと行政・学校など様々な機関や、部落内の既存の人的ネットワークを活かしてうまく機能していたが、このことは地域就労支援事業が部落内の者にのみ有効であるというわけではない。コーディネーターは、それぞれの市町村全域を担当するために、部落外の者からも相談を受けている。その場合には、コーディネーターが相談者のことをほとんど知らないという現実から出発するが、これについても信頼関係を築きながらサポートが有効であることがうかがえた。

 以上の分析から導き出される本報告書の意義は、大卒「フリーター」、「やりたいこと」を求めて自ら進んでフリーターになるような、新しいライフスタイルを模索する比較的階層の高い「フリーター」へのまなざしが、「フリーター」問題の中心的課題として取り上げられることによって隠蔽される、深刻化しつつある若年失業・不安定就労の実態であり、その背後に潜む階層的不平等の実情、である。「フリーター」を層として一面的にとらえることは極めて危険であり、マイノリティ・低階層出身者それぞれの実情を踏まえた「フリーター」対策が必要とされる。

若年未就労者問題(小中高のキャリア教育/労働市場問題)研究会