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2006.04.27
書 評
 
李 嘉永

二宮 周平 著

2006年2月20日発行 A5判 106頁、1,200円+税

 「1 戸籍の不思議」では、まず戸籍制度の概要が示される。戸籍制度の仕組みの原理として、まず「同氏同戸籍」と「三世代戸籍の禁止」があげられる。そして、戸籍を表示する「見出し」としての「戸籍筆頭者」、「父母欄」「続柄欄」「性別欄」「身分事項欄」の存在、そしていわゆる「公開の原則」が紹介されている。これらの項目からなる戸籍の特徴が幾つかあげられるが、中でも一生の身分・親族・居住関係の変遷が追跡できること、家族単位の登録制度になっていること、さらに公開が原則とされていることによって、本人の知らないところで他人がプライバシーに関わる情報を入手することができ、プライバシー侵害を引き起こしていたと指摘する。また、戸籍筆頭者に関して夫婦間の主従関係、父母欄・続柄欄に関して婚外子の問題、性別欄に関して性同一性障害の問題が生じることを指摘している。

なぜこのような制度ができあがったのか。「2 戸籍制度の成り立ち」は、「壬申戸籍」以降の戸籍制度の変遷をたどっている。当初は近代的な徴兵・徴税制度の確立のために、国民の把握を必要としたことを目的としていたが、その手続きの煩雑さから、現況主義が放棄され、身分登録簿としての性格が強まった。そこから「戸籍の観念化」、「家意識の醸成」という現象が生じたとする。その後の改正論議では、「個人別登録制度」か「家単位制度」か、ひいては「近代的個人主義」か「家制度」か、という枠組みにおいて議論されてきたとする。その一方で、社会的には、家意識が強固になり、そこから「家が汚れる」などといった差別意識が派生してきたとする。

 では、多様な家族や個人のあり方を保障するために、戸籍はいかにあるべきか。本書は、「3 個人の尊重と戸籍のあり方」では、現行憲法の施行に伴って、家制度が解体されたにもかかわらず、戸籍が家意識の存続に根拠を与えたことを指摘した上で、家族単位登録の編成原理を改め、個人別・事件別の登録制度の採用を主張している。すなわち、各個人が筆頭者となって、家族関係を記載することにで、個人の尊重にふさわしい登録制度に変更することを提案している。また、証明システムとしては、個人別登録簿を非公開とし、個別の事項についてのみ証明書を交付すべきとする。このことにより、不必要な情報が他者の手に渡らないようになり、プライバシー保護に一層資することになろう。

 「4 戸籍と自己情報の管理」は、公開原則の転換を主張している。当初は不動産登記の必要性から戸籍の公開が求められたが、その後その趣旨を超えて戸籍が用いられ、身元確認の手段を提供することとなる。すなわち、離婚歴や婚外子、養子関係を暴露し、また部落出身であることを確認する道具として用いられてきたのである。その後幾度となく公開制限が行われたが、昨今問題となっているいわゆる「八業種」従事者や公安関係者による不正取得、委任状偽造などが発生した。そこでこの際、非公開を原則とし、自己情報コントロール権を保障する観点から、本人通知制度の導入を主張している。