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2008.04.21
書 評
 
李嘉永

部落解放・人権研究報告書 No.9

2006年度版 CSR報告書における人権情報

 今日、多くの企業が企業の社会的責任(CSR)を果たす取り組みを進めているが、そのCSR活動の一環として、CSR報告書を作成し、ステークホルダーに対する説明責任を果たそうとしている。当研究所では、2005年度版に引き続き、2006年度版のCSR報告書において人権に関連する取り組みがどのように反映されているかを検討し、その成果を「2006年度版 CSR報告書における人権情報」として取りまとめた。

 第1章では、CSR報告書の意義と、近年の動向について述べている。CSR報告書は、単なる情報開示のためのツールではなく、ステークホルダーに対して説明責任を果たし、かつステークホルダーとの対話の「入口」として活用するべきものであることを指摘している。また、近年の動向として、グローバル・コンパクトのCommunication on Progress、GRIガイドラインや環境省ガイドラインの改訂、さらにはCSR報告書に関する各種調査について紹介している。

 実際に収集したCSR報告書は、2005年度版の分析の際に用いたチェック項目を若干改訂したものを用いて分析した。その結果を第2章で示している。収集したのは590社、593誌であった。特徴的な変化としては、報告書のタイトルにCSRを掲げる企業が77社から163社へと飛躍的に増加したことが挙げられよう。また、CSR調達基準に人権尊重の項目を盛り込む企業、取引先調査を実施する企業が若干増加している点も重要であろう。しかし、ネガティブ情報を含む課題の明示は2005年度版と同様低調であった。

 また、ステークホルダーミーティングにおいて人権問題に触れているものは依然として少なく、第三者意見・第三者評価も同様である。このことは、企業のみならず、ステークホルダーの側にも、人権問題を重視する姿勢が求められていることを物語っている。

なお、補論として、人権・同和問題企業連絡会に加盟する企業の特徴を別途検討している。報告書上での人権情報は、一般的な傾向に比して優位性がみられるものの、実際の取り組みが報告書に反映されていないともいえるであろう。

 第3章では、CSRをタイトルに含む報告書の特徴を検討している。これらの報告書における人権情報、特にCSR体制やステークホルダーミーティング、トップステイトメント、サプライチェーン・マネジメント、人権の社内体制、人権啓発、本業を活かした取り組みなど、17分野にわたるグッド・プラクティスを紹介し、また、その結果明らかになった課題を指摘している。特に、海外の動向が触れられていない点や、人権が従業員の箇所に限定されている点、非正社員や就職困難者の課題には殆ど言及が無いことなどを挙げている。

 なお、付録には、グッド・プラクティスの事例や、単純集計票を収録している。是非今後の取り組みの参考として活用していただきたい。