Home部落問題入門最近の差別事件2002年 >差別投書・落書き・電話
 先に述べたように、本書で紹介した差別事件は氷山の一角であり、ここから今日の差別事件の全体像を説明することは困難と思われるが、紹介した差別事件の範囲内での特徴を考察していくことにする。

 差別投書については、長野、東京、和歌山、奈良、などで事件が発生している。とくに、長野の事件は、村役場課長や村議会文教委員長など12人に、村在住の個人と村・村長を中傷した手紙を郵送しているが、その手段として「…あの方は、京都の有名な被差別部落の出身。『ヨツ』ですよ…」と部落差別を利用したり、東京では支部員宅を特定してポストに「エタ死ね」というメモを入れた、非常に悪質な内容である。これら犯人の特定が困難な事件に対して現状では有効な手立てが無く、人権侵害に対する規制・救済の具体的対応策が急がれるところである。

 落書きでは、連続性、同一犯の可能性、暴力的内容などの事件があいかわらず多くみられる。京都では、京都府知事選挙の予定候補を誹謗するために部落差別を利用した落書きが続いており、東京、香川、高知、長野などではかなり長期間にわたっている。匿名性の高い落書きをなくしていくことはかなり困難ではあるが、一つひとつのていねいな分析から具体的な方策を見出していくことで、今日の啓発や教育の不十分さを克服していくという視点も大切である。

 電話については、奈良では「大阪府在住」と名乗る男性が引越しに際してそこに同和地区があるかどうか電話で問い合わせた事件が起こっているが、このような問い合わせはあとをたっていない。とくに2002年度はインターネットの項でも述べられているが、単なる部落の地名の特定だけでなく被差別部落内の公営住宅などが写真付きで紹介されたりしているケースもでてきており、今後、興味本位から利害関係まで含めて具体的な「同和地区」についての情報に関する事件が増加していく傾向にあると思われる。

 また、高知では個人宅の留守番電話の記録に差別発言がなされたりしたケースもでてきている。