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 今回紹介している「公務員による差別事件」は、とくにその内容が悪質である。

 大阪の事件は、大阪市教委管理職の部下の女性職員に対する差別発言であるが、この管理職は同和地区内の施設に勤務していた経験もありながらの事件である。糾弾会の過程で、この管理職の地域における同和行政に関わる職務経験と潜在的な偏見等が重なって「プラスも、マイナスも知っている」といったおごりを生み出し、その差別の矛先が、部落出身者にむけられた事件だったことが判明した。そしてこの管理職自身の謝罪と今後の研鑽を含め、大阪市教育委員会の職員研修の抜本的な改革が進められたり、市職員を対象とした人権侵害に対する救済方策の検討委員会設置などを確認している。

 和歌山では、和歌山市の人権担当職員が県内の町役場に「…同和地区住民(エタ、ヒニン)は抹殺せよ。…」といった内容の差別メールを送信していた。事件の発覚は、プロバイダへの問い合わせから特定している。動機については確認会の中で、「同対課に配属されたが、課の人に村八分にされていると思った。また、小学校のとき先生からいじめられたことが重なった」と述べており、中学生の時に、おじや近所の人から「部落は怖いところ」と教えられたともいっている。この事件では行政サイドの県連への連絡が遅く、事実確認の中でその点についても指摘があった。さらに同じ和歌山市職員が県庁人権室を訪れ、娘の結婚相手が部落出身かどうかの問い合わせを行っている。

 また、三重では、町の教育長が新しい中学校講師の採用に際して差別発言を行っている。

 「法」失効に伴い、ややもすれば同和行政を人権行政の中に埋没させようという気配も感じられるが、これら一連の事件をみたとき、むしろ、より一層きめ細やかに被差別の実態を把握し、その解決の手立てを人権行政として推進していく必要があるのではないか。

 そのためには被差別部落の実態調査に加えて、総合的な生活相談やそこからの支援方策の創造が大切であると考える。それは、これまでの同和対策のおもな手法であった、一人ひとりの要求をある対策事業で対応するのではなく、一人ひとりの相談から一人ひとりに適したさまざまな施策の活用や施策のコーディネートである。そして、そこに行政の主体としての、また協働のパートナーとしての行政職員の資質が問われるのである。