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■全国大量連続差別投書・ハガキ等事件

 この事件は2003年5月から、東京都内を中心に全国の被差別部落出身者や団体に露骨な差別ハガキ・手紙等が連続して届けられるというものであり、2004年6月時点で今もなお続いている。その一つひとつを紹介すれば厖大な量になるので紙幅の都合上ここでは事件についての概説だけにとどめておく。

 2004年6月15日までに送りつけられてきたハガキ等はこれまでに全国で450件近くにのぼり、そのうち350件が東京あるいは東京関連である。また、差別ハガキ・手紙等を送られた被害者は全国で100人にも及び、そのうち東京では30人ほどになる。

 この事件の特徴としては、まず450件という量の多さがある。そしてこれまでの取り組みを通じて、筆跡等から推測して同一犯であると考えられているが、ハガキや用紙いっぱいにぎっしりと文字が書かれており、匿名性を悪用して時には挑発的な内容までも書かれている。

 具体的には、<1>個人に対する差別・誹謗・中傷、<2>個人や団体の名を騙った部落解放同盟への差別・誹謗・中傷、<3>個人の自宅周辺への差別扇動の呼びかけ、<4>個人の名を騙った物品注文や特定政党機関紙への投稿や宗教団体への入信申込み、<5>個人の名を騙った被差別部落出身者への脅迫、<6>個人の名を騙った電気・ガス等の解約依頼、<7>個人の名を騙ったハンセン病回復者や在日韓国・朝鮮人、障害者、外国人労働者等に対する差別・誹謗・中傷、などに分類することができる。

 事件の発端となった5月の東京食肉市場への差別投書の後、全国の部落解放同盟都府県連や支部等に差別ハガキ・投書が送りつけられるようになり、6月頃からは東京を中心に、同盟員個人の名を騙った物品注文による物品が送りつけられるようになった。7月には東京都の未組織部落の個人宅に脅迫ハガキが送りつけられるようになり、9月から10月にかけては、同盟員個人の名を騙っての電気の契約解約、東京都の数ヵ所の個人宅周辺に被差別部落出身を暴露し差別を扇動するハガキがばらまかれるようになった。

 この間、被害者を守る闘いや犯人特定の取り組み、事件に対する告訴等、活発に続けられ、中間集約として12月3日に都連が真相報告集会を開き、その事件の悪質さからマスコミ報道も行われるようになった。それらの取り組みに対して犯人は12月、突如一方的な終結宣言を行ってきた。これに対して都連が一方的な終結を許さず犯人の特定まで粘り強く闘うことをホームページで紹介したところ、翌年1月、「必ず我々の前であやまらすとかえたのくせして生意気なことをいってるんじゃない」と再開宣言のハガキが送られてきた。犯人は11月、個人の名を騙りハンセン病回復者への差別手紙を送りつけた後、翌年3月には障害者や在日韓国・朝鮮人、外国人労働者に対する差別・誹謗・中傷の手紙をそれぞれの運動団体に送りつけており、6月現在、なおも差別手紙が続いている。悪質さが徐々にエスカレートしてきているといえる。

 この事件の深刻さは、まず差別ハガキ等を送られた被害者の精神的な苦痛があり、名前を騙られて物品注文されたあげく物品が送られてきたりするという被害もある。また、名前を騙られて電気やガスを止められるなど、ライフラインにまで被害が及ぶという日常生活への脅威もあり、この状態が長期にわたっているという深刻な人権侵害の状況がある。さらに、名前を騙られて障害者や在日韓国・朝鮮人、外国人労働者に対する差別・誹謗・中傷の手紙がそれぞれの運動団体に送られ、回復不可能な「名誉毀損」と、他の個人・団体に対する人権侵害拡大という耐え難い屈辱をも受けているのである。

 この深刻な人権侵害に対する救済について、事件の相談をうけた東京法務局の姿勢は残念ながら被害者の怒りをかうものであった。昨年廃案になった「人権擁護法案」について部落解放同盟をはじめとした各界各層からいくつかの問題点について指摘されたが、あらためて被害者・被差別当事者の立場からの人権侵害救済法・差別禁止法などの法整備が急がれるところである。